【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第8章 6
その瞬間、透の時が止まった。世界の音が全て無くなってしまったような。
大きく見開かれた瞳から、溜まっていた涙が溢れ出し、彼女は激しく喘ぎ始めた。
「あ……、っ、ひ……っ……」
予想だにしなかった言葉の熱量に、透の細い喉が震える。
肺が空気を拒絶するように、過呼吸が彼女を襲った。視界が白く霞み、膝から崩れ落ちそうになるのを、爆豪が強い力で抱き止める。
「おい、透! 落ち着け、吐け、息を吐け!」
「っ……、う、ああ……ごめ……ごめんなさい……っ」
爆豪の胸に顔を埋め、透は子供のように声を上げて泣きじゃくった。
「……ごめん、なさい……。ずっと……気づかない、ふりしてて……ごめんね……」
「……あぁ」
震える手が、爆豪の衣類をぎゅっと掴む。
「轟くんに、言われたの……。自分に、嘘をつくなって。……素直になれって。……でも、怖かったの。好きって言ったら、全部なくなっちゃう気がして……」
透は爆豪の体温を確かめるように、さらに深くその胸に縋り付いた。
「私も……私も、大好き……っ。爆豪くんが、大好きなの……本当は、ずっと前から、……っ」
爆豪は彼女の髪に顔を寄せ、耳元で安堵したように低く、そして優しく囁いた。
「……遅ぇんだよ、バカ女」
この世で最も大切なものを扱うように抱きしめ、二度と離さないと誓うように力を込めた。
夕闇が二人を包み込み、境界線が消えていく。
歪な形で始まった「利害の一致」が、血と涙を経て、ようやく本物の「恋」へと姿を変えた瞬間だった。