• テキストサイズ

【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】

第8章 6




病院を飛び出した爆豪の足は、迷いなくその場所へと向かっていた。

街明かりから遠く離れた、静まり返った湖畔。周囲の木々が黒い影となってそびえ立っている。
空は橙と紫が混ざり合うかたわれ時に染まり、湖面は死んだように静かにそれを受け止めていた。


かつて透が、「考え事がある時はいつもここに来る」と、欠伸を噛み殺しながら零したのを爆豪は覚えていた。一度聞いた程度の、なんてことのない世間話。だが、彼女に関するすべての情報が、爆豪の脳内には消えない刻印として刻まれていた。



波打ち際に、病院の薄い寝巻きの上にコートを羽織っただけの、小さな背中を見つけた。


「……おい……ハッ、ハッ……見つけたぞ、クソ女。」
肩で息をしながら、低く、震える声を絞り出す。脇腹の傷が燃えるように熱い。

透の肩がびくりと跳ねた。振り返った透の顔は、驚きと、そして絶望に近い恐怖に染まっている。

「……ば、くご、くん……? なんで……病院に、いたはずじゃ……」

「てめーが、黙って消えたからだろーがよ!」
爆豪は震える脚を一歩ずつ踏み出し、彼女との距離を殺す。


透は後ずさるように立ち上がり、自らの手を隠すように胸元で抱きしめた。その指先は、まだ薄汚れた赤黒い記憶に染まっているように見えた。

「こないで……。お願い、見ないでよ……!」

声が震えていた。いつもの余裕や、大人びたクールな響きはどこにもない。これが、彼女の隠してきた“素”なのだろう。

「あ、あたし……あんなことするつもり、なかったの。でも、爆豪くんが死んじゃうと思って……あんな、バケモノみたいな……」


透は呼吸を乱し、子供が泣きじゃくる前のように拙い言葉を並べた。

「かっこよくないよ……あんなの、ヒーローじゃないもん……。あたしのこと、嫌いになったでしょ? 気持ち悪いって、思ったでしょ……?」


/ 112ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp