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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **


𓂃 side:伏黒恵 𓂃



何度調べても、姑獲鳥の気配は見つからない。


工場に入ってから、すでにかなりの時間が経っている。
割れた窓から差し込んでいた西日も弱まり、建物の中は少しずつ薄暗くなり始めていた。


足元を歩いていた玉犬たちも、手がかりを掴めないまま俺の周りをうろついている。



「一通り見たけど、やっぱりここじゃないかもしれないね」



いつの間にか近くに来ていた五条先生が、足を止めて言った。



「恵の推理は悪くなかったと思うよ。でも、これだけ探して綻びひとつ見つからないとなると、別の場所も探すべきかもね」

「…………」



俺の考えすぎだったのか。
ノートに残されていたあの『す』は、巣なんかじゃなかったのか。

もし、見当違いな場所を探して時間を無駄にしていたのだとしたら。
今こうしている間にも、は――。


……くそっ。

本当に、ここにはいないのか。
諦めて、別の場所を探すしかないのか。


重い足取りで五条先生と外に出ようとした、その時だった。


視界の端で、何かが揺れた気がした。

少し離れた作業台の奥に、大きな白いシーツが吊るされている。


薄暗くなった工場の中で、その布の一部分だけが、向こう側から照らされたようにぼんやりと明るくなっていた。


西日の反射か。


だが、その淡い光の中に、黒い影がすっと浮かび上がった。


小さな輪。
それが二つ、互いに重なり合って――。

二度、小さく揺れた。



「…………っ!」



今のを見間違えるはずがない。


十年前から、ずっと。
あいつが声を出せない代わりに、俺に向けてきた合図。


俺とだけが知っている、あの――。
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