第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**
こういう割り切った関係には向こうも慣れている。
余計なことを求めてこないし、後腐れもなくて楽だ。
名前は……なんだっけ。
忘れた。
何度か会ってるけど、それ以上でも以下でもない。
ベッドが沈んで、甘ったるい香水の匂いがすぐそばまで近づいてきた。
ネイルを施した指が、僕の胸元を焦らすようになぞる。
でも、僕が何の反応も返さないからか。
女は顔を覗き込んで、むっと眉を寄せた。
「今日、全然乗り気じゃなくない?」
そうなんだよね。
目の前に、普通なら十分その気になれそうな女がいるっていうのに。
しかも、自分から呼び出しておいて。
どうにも気分が乗らない。
女は一瞬呆れたような顔をしたあと、すぐにふふっと笑った。
それから僕のベルトに手をかける。
「じゃあ、私頑張っちゃおうかな」
慣れた手つきで僕のベルトを外し、ジッパーを下ろす。
女は僕の脚の間へ身体を移すと、顔を伏せた。
僕は頭の後ろに手をやって、ぼんやりとその様子を見下ろす。
上手いとか、下手とか。
そういうことじゃないんだよな。
……なーんか、物足りないんだよな。
もし、僕の目の前にいるのがこの女じゃなくて。
だったら――。
あの子、絶対こんなことしたことないだろうな。
セックスだって、たぶんまだ。
僕が頼んだら、してくれるのかな。
いや、そもそも見ただけで固まりそう。
両手で顔を隠して「無理です!」とか言うくせに。
気になって、結局指の隙間から見ちゃうんだろうな。
慣れない手つきで、おそるおそる手を伸ばして。
潤んだ目で僕を見上げながら。
あの小さな口でどうしていいかわからず、見よう見まねで一生懸命動かそうとするかな。