第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**
五条さんの『専属淫魔』としてこのマンションで暮らし始めてから、数週間が過ぎた。
初日こそ「気絶」という大失態を犯してしまったものの、その後はなんとか平穏な(?)日々を送っている。
とはいえ、専属淫魔らしいお仕事ができているかというと……全くそんなことはない。
私がベッドでどんなにえっちな服を着ても。
先輩に教わった通りに、精いっぱい誘惑しても。
五条さんは「はいはい、おやすみー」と、おでこを小突いて寝かしつけてしまうのだ。
それでも私が精気不足で倒れないのは、こまめに五条さんが「おやつ代わり」と言って、あの甘くて濃いキスをしてくれるからで。
結局、私は五条さんに飼われているペットのような状態になっている。
そして、この同居生活で、私は五条悟という人間の『生態』を、いくつか知ることになった。
まず一つ目。
五条さんは、信じられないほどの『甘党』だった。
冷蔵庫の中は常にマカロンやチョコレートで埋め尽くされているし、帰ってくる時は必ずと言っていいほど、有名店の紙袋を提げている。
あんなに背が高くて大人の男の人なのに、ソファでショートケーキを美味しそうに頬張る姿は、なんだか少しだけ可愛かった。
「……五条さん。またケーキ買ってきたんですか?」
「うん。そこの駅前に新しいスイーツのお店ができてさ。の分もあるよ」
「そんなに甘いものばかり食べて、身体に悪くないんですか?」
「僕の脳みそは常にフル回転してるからね。これくらい糖分補給しないと焼き切れちゃうの」
「はあ……」
この人、たぶん砂糖でできている。
舐めたら、甘かったりして。
……いや、何を考えているの、私は。
二つ目。
五条さんは、家の中にいる時でも常に『目を隠している』。
寝室のクローゼットを開けると、そこには真っ黒な目隠しと真っ黒なサングラスが、まるでコレクションのようにずらりと並んでいる。
正直、初めてそれを見た時は「変な趣味の人だ……」と少し引いてしまった。
外から帰ってきた時はもちろん。
ソファでくつろいでいる時も、私にキスをしてくる時でさえ、必ず目元を何かで覆っているのだ。
前が見えているのか不思議でたまらないけれど、本人はまったく不自由なく生活している。
(……目隠しの下、どうなってるんだろう)