第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
すると、さっきまで俺を受け入れていたが、すごい勢いで上体を起こした。
そして、下着に指をかけていた俺の手を、上から覆うようにして全力で押さえつけてくる。
は、顔をこれ以上ないくらい真っ赤にして、涙目で、ぶんぶんと首が千切れそうな勢いで首を横に振っていた。
声こそ出ていないものの、その表情からは、
「ダメ!!」
「絶対ムリ!!」
そういう悲鳴が聞こえてくるようだった。
あまりの必死さに圧倒されていると、は俺の右手を掴み、掌に人差し指で文字を書き始めた。
『め』
『ぐ』
『み』
『く』
『ん』
『の』
『え』
『っ』
『ち』
掌に伝わるくすぐったい感触を頭の中で繋ぎ合わせて、俺は思わず天を仰ぎそうになった。
(……えっちって)
これから先にしようとしていることに比べれば、こんなのは序の口だろ。
けれど、にとっては『えっち』認定されるほどハードルが高くて、恥ずかしすぎる行為らしい。
必死に抗議しているのに、そのやり方があまりにもらしくて。
「……っ、ふ、」
には悪いと思いつつ、堪えきれずに吹き出してしまった。
笑ったせいで、は唇を尖らせながら、俺をポカポカと叩いてくる。
「悪い、……っ、違う。馬鹿にしてるわけじゃなくて……」
俺はの両手首を軽く包み込むようにして捕まえた。
まだ少しだけ不満げに俺を見上げている潤んだ瞳を、真っ直ぐに見つめ返す。
「……可愛いと思っただけだ」
言った瞬間、の動きがぴたりと止まった。
さっきまで尖っていた唇が、ぽかんと開いている。
だが、数秒遅れての顔が耳まで真っ赤に染まった。
俺も、自分で言った言葉を遅れて理解した。
(何言ってんだ、俺……)
急に顔が熱くなって、思わずから視線を逸らした。
もで、もじもじしながら俯いている。
(……なんだ、この空気)
俺はふぅと息を吐いて、誤魔化すようにの手首を解放した。