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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


ベッドの上で寝返りを打つと、机の上に置いたままのから借りたハンドタオルが目に入った。

あとで洗って返す。
そう言ったくせに、まだ返せていない。


それを見るだけで、あの日のことを思い出す。


あれからだ。
あれから、俺たちの関係はぎこちなくなった。




寿司を食べに行く前に、文房具屋に寄った。
が今使っているノートが、もうすぐなくなりそうなことに気づいていたから。


せっかくだから、初めてノートを買った文房具屋に連れて行った。
がずっと似たような花柄のノートばかり選んでいたことも、知っていた。


最初にあのノートを選んだ理由なんて、たいしたものじゃない。

花の名前も知らなかった。
花言葉なんて、当然知らない。

ただ小さな青紫の花が、なぜかっぽいと思っただけだ。
控えめだけど、ちゃんと何かを伝えようとしているような。


だから、手に取った。



『これとか……書きやすそうだし』



そんな適当な理由をつけて、に渡した。
は気に入ったのか、これがいいと言うように頷いていた。

無理に押し付けたみたいだったかと少し思ったが、その時のの顔を見て、選んでよかったと思った。


たぶん、あの時からだ。
俺は気がついたら、の顔を見るようになった。

好きか。
嫌いか。
迷っているのか。
嬉しいのか。


声がなくても、分かることはあった。
いや、分かりたいと思った。


今回も似たような柄のノートを俺が選んだら、はすげー嬉しそうな顔をした。
買ってやったら、宝物みたいに大事そうに抱えていた。
「ありがとう」の合図も何回も何回もして。


倉庫で、手のひらに触れた指先。
逃げるみたいに書き足された『し』の文字。

二人で出かけようとメッセージした時、すぐに返ってきた返事。

似合ってると言ったら、目を丸くして俯いた顔。

俺の服を褒めて、かっこいいと書いてきた時の赤くなった耳。


思い返せば、そういうものばかりが浮かんでくる。
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