第17章 探究者達
パンは美味しい。
紅茶も美味しい。
目玉焼きだけが、何かおかしい。
イルミは理由が分からなかった。
「先生……」
「……」
「そんなに不味いですか」
「うん」
エレオノーラはしゅんと肩を落とす。
「やっぱり……私が作ったからでしょうか」
「そうじゃない」
イルミは真剣な顔で皿を見つめたまま言う。
「何かが違うんだけど」
「何でしょう……」
「分からない」
二人はそのまま黙り込む。
しばらくしてエレオノーラが恐る恐る口を開いた。
「先生」
「何」
「目玉焼き、作ったことありますか?」
「いや」
「……私も、数えるくらいしかありません」
「……」
「……」
二人は揃って皿を見つめた。
「分からないな」
「分かりませんね」
結局答えは出ないまま、イルミは空になった皿を見つめた。
「まあいいか。胃に入れちゃえば同じだしね」
エレオノーラは小さく瞬くと、少しだけ吹き出しそうになる。
「料理長に聞いてみますね」
「よろしく」
エレオノーラは空になった皿を静かに下げると、一度だけ息を整えた。
「今日の午後はいよいよリハーサルですね」
「そうだね」
「では、それまで楽譜の方を進めましょうか」
「いや……」
イルミは小さく首を振った。
「今日の写譜はいいよ」
「でも……」
「午後の方が重要だから」
エレオノーラは少し迷うように俯いてからイルミを見上げた。
「王女が欠伸してたら監督責任になるし」
そう言うイルミ自身も、大きく欠伸を一つする。
「俺もまだ眠い」
「……分かりました。では、午後に」
「うん。お休み」