第17章 探究者達
翌朝。
「先生、おはようございます」
「……うん」
エレオノーラが朝食を運んで来ると、イルミはまだ起きたばかりの様子で眠いのか、反応がいつになく薄かった。
イルミはテーブルに着くと、何も言わず手にしたパンを半分に割った。
ふわりと湯気が立つそれを黙って食べているイルミを視界の端で見ながら、エレオノーラはカップにお茶を注ぐ。
「どうぞ」
イルミの視線が紅茶へ移った。イルミは素直に白磁のカップを持ち上げ一口含む。
エレオノーラは向かいの席に座り、俄かに緊張した面持ちでその様子を見守っていた。
「宮廷の食事はお口に合いますか?」
「うん」
その一言に、エレオノーラは少しだけ頬を緩める。
「良かったです」
イルミは最後の皿へ目を向けた。
目玉焼きにナイフを入れ、そのまま一切れ口に運ぶ。
「……」
イルミの手が止まった。
エレオノーラの笑顔も止まる。
「……」
イルミはもう一口食べた。
「……」
また手が止まったイルミに、エレオノーラは内心ドキリとした。
「どうかなさいましたか?」
返事はないまま、黙々と食べ進めるイルミの黒い瞳が皿をじっと見つめている。
やがてイルミは小さく呟いた。
「いつもと違う」
「え?」
「何でか、美味しくない」
エレオノーラは肩をぴくりと震わせた。
「この目玉焼きは……」
エレオノーラは答えた。
「先生に少しでも元気になって頂ければと……私が作ったんです」
「そう」
返事は早く、直ぐにイルミの視線は目玉焼きに集中する。
「俺が元気になるかは別として」
イルミはフォークで白身を軽く押す。
「火も通ってる」
「はい」
「塩も普通」
「……はい」
「どうみても普通の目玉焼きなのに」
「……」
また一口イルミは食べて首を傾げる。
「油は?」
「バターです」
「卵は?」
「厨房の卵を使わせてもらいました」
「……」