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【H×H イルミ】黒と白のアリア

第17章 探究者達



「寝る」

短くそれだけ告げると、イルミは机の上の総譜を閉じた。
インク壺にペンを戻し、静かに立ち上がる。

エレオノーラも慌ててペンを置いた。


「エレオも適当に休んで」

「……はい。お疲れ様です」

イルミは軽く頷くと、そのまま部屋の奥へ行った。



足音が遠ざかり、完全に聞こえなくなった瞬間だった。

「……はぁぁぁ」

張り詰めていたものが一気に解ける。

エレオノーラは普段なら決してしないような格好で、そのままソファへ倒れ込んだ。

柔らかな背もたれが身体を受け止める。

肩が重く、指先が熱を持つ。
目を閉じると、まだ五線譜が瞼の裏に浮かんでいた。音符が並び、スラーが流れ、黒い点が揺れて見える。

それでも、さっきまでとは違う。
終わらない作業に追われていたはずなのに、今は頭の中で旋律が自然と流れている。

音楽はひとつの頂点へ向かって進んでいく。

その流れに身を乗せれば、譜面はただの記号ではなくなる。

「……ふふっ」

少しだけ笑みが零れる。

それでも身体は正直だった。
腕一本持ち上げるのも億劫で、ソファに沈み込んだまま天井を見上げる。

(……ウイング先生)

心の中でそっと呟く。

(イルミ先生より、私が先に倒れそうです……)

そう思うと、少しだけ可笑しくなる。

瞼は重く、指先は痛い。
それでも明日は歌える。
歌うしかないのだから――そう思った。
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