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【H×H イルミ】黒と白のアリア

第16章 喧騒の交差点


残されたのはエレオノーラとウイングだけだった。

「ウイング先生」

「はい」

「曲を十五曲書くというのは、どれくらいのことなのです?」

ウイングは少し考えた。

「人にもよりますが……オーケストラや合唱曲は一曲でも大仕事です」

「では」

「彼は異常な作曲速度です。それでも今回のような状況は珍しい」

エレオノーラは少し考え込む。

「でもイルミ先生なら問題ないのでしょう?」

「普通ならまず無理です」

ウイングは静かに答える。

「ですが、彼ならやってしまうかもしれません」

その言葉には安心よりも不安が滲んでいた。

「しかし」

ウイングはイルミの消えた廊下へ視線を向ける。

「オペラ一作と、一人の若者の人生を天秤にかけてはいけない」

「イルミ先生の……?」

「それくらい異常な状況なんですよ」

エレオノーラは黙り込む。



戦後の復興。
政治と民衆。
その全ての歪みが、一人の青年へ集まり始めている。

「うちは文化都市ではなく軍事国家ですものね」

「そうですね」

ウイングは頷く。

「ですが、だからこそ音楽が必要なのです」

「そうですけれど……」

ウイングはエレオノーラを見る。

「殿下」

「はい」

「ゾルディック先生の様子を見てきてください」

エレオノーラは瞬きをした。

「私が?」

「私が行けばきっと追い返される」

ウイングは苦笑する。

「ですが殿下ならそういう訳にもいかないでしょう」

そして、少しだけ間を置いて続けた。


「恐らく彼は、限界という概念を教わっていない」

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