第37章 ゴーストアプリ
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ある日、L子は帰りがけ、T子に呼び止められた。
L子に、一緒にN神社まで行ってほしいというのだ。
N神社とは、学校からだと、電車で30分ほど離れたところに位置する小高い山の中腹にある寂れた神社らしい。T子の家はN神社の直ぐそばだそうだ。
どうして?と聞くと、しばらくT子は言いにくそうに口ごもっていたが、ついに、例のアプリからの指示なのだと明かした。
T子が言うには、アプリをインストールしてしばらくはなんにも反応がなかったのだが、ある時、T子が部屋にいるとき、唐突にメッセージが届いたのだという。
それは一言
「ちち」
とだけだった。
「ちち?」L子は尋ねた。
「実は、私のお父さん、私が3歳のときに登山に行ったきり、行方不明なんだ。お母さんはもう死んでしまった、というのだけど・・・。」
それで、T子はこのメッセージの「ちち」は「父」という意味で、自分の父親からのメッセージなのかもしれないと思ったのだそうだ。
ある時T子は半信半疑ながらも、
「お父さん?」
とアプリに打ち込んでみた。
すると、
「ちち」
とまた、返信があった。
「どこにいるの?」とT子が尋ねると、
しばらくして
「あな」
と返信があった。
また、しばらくして、
「くらい」
と、更にメッセージが届いた。
それから、断続的にメッセージが届くようになった。メッセージの大半は
「ああ」
とか
「いかない」
とか
「やま」
のような断片的であまり意味のない単語だったが、まれにいくつかの単語が連続して送られてきて、意味が読み取れそうになることがあるそうだ。
「ここ最近、繰り返し、こういうメッセージが届くの」
T子はL子にスマホのアプリを開いてみせた。そこには連続してメッセージが並んでいた。
「くらい」
「あな」
「ちち」
「あかり」
「あな」
「よる」
「あな」
「ちち」
「よる」
「ひとり」
「N」
「やま」
「くらい」
「よる」
「だれか」
「あな」
「くらい」
「あかり」
「あかり」
「はやく」
「だいたい、最近、こういう感じなの」
T子は言う。
「これって、N神社の上にある風穴にお父さんがいて、夜は暗くて寂しいから、明かりを持ってきてほしいって、そういうことかもしれないって」