第36章 死神
「あのネコ・・・」とD子が口にすると、おばさんは後ろを振り返り、また、D子に向き直って「どうしたの?」と言う。あれ程ネコ好きなのに、そこにいる黒猫には興味を示さない。
『ヘンなの・・・』
と思ってもう一度道の先を見ると、もう、そのネコはいなくなっていた。
何日か後、D子がおばさんの家の前を通りかかると、おばさんの家に白黒の幕がかかり、ぷんと線香の匂いがした。黒い服の人が数人家の中に入って行く。幼いD子にとっては、葬式を見るのは初めてであったが、それでも、なんとなく普通じゃないことは分かった。
『おばさん、死んじゃったの?』
ネコはどうなるんだろう?幼心にそれが心配だった。無駄だと思ったが、きょろきょろと周りを見回すと、おばさんの家の塀の上に一匹の黒猫がいるのを見つけた。
あのときの黒猫だ、ととっさに思った。
黒猫はじっとおばさんの家の中を覗いていた。D子はそのネコをじっと見ていた。
その時、不意に黒猫がD子の方にその顔を向けた。その顔を見て、D子はびっくりした。
この間は気づかなかったが、その両の眼はぽっかり穴が空いたみたいに、真っ黒だったからだ。