第26章 そして、スランチオに始まる【予兆/人外魔境新宿決戦】
ベンベンッと楽巌寺の琵琶の音色に合わせ、ダンッと歌姫が足を踏み締める。
――庵 歌姫の術式【単独禁区(ソロソロキンク)】
術式範囲内の歌姫本人を含む任意の術師の呪力総量、出力を一時的に増幅させる。
呪術を極めることは、引き算を極めること。
呪詞や掌印など、術式を構成、あるいは発動させるまでの手順をいかに省略することができるかで、術師の腕は決まる。
しかし、歌姫は一切を省略しない。
呪詞、掌印、舞、楽――術式を儀式として昇華することで、120パーセントの効力を得る。
――史上最強の術師、現代最強の術師。
どちらが挑戦者になるかは、この一撃で決まる。
「【九綱(くこう)・偏光・烏と声明(しょうみょう)・表裏の間(はざま)】」
五条が呪詞を唱えながら掌印を結んでいく。
歌姫と同様に、一切の手順を省略せずに放つ、200パーセントの――……。
「――【虚式『茈』】」
渋谷から新宿にかけて、一直線にビルや道路が消し飛ぶ。そして、宿儺が待機していた新宿のビルを消し崩した。
――伊地知の張った結界により、宿儺は五条の初手を見誤る。
五条の気配は察していても、その膨大な出力を直前まで感じ取れていなかった。
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砂煙を巻き上げながら現れた宿儺の前に、五条は降り立つ。呪力強化で受けたのか。五条の【茈】により、宿儺の腕の先が消し飛んでいる。
「勘違いしてるみたいだから言っとくけど、そっちが挑戦者だから」
挑発するように五条が指をさせば、宿儺は「クソガキが」と忌々しそうに眉を寄せた。