第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】
「え……何よ、その顔……もしかして、知ってるの⁉︎ 愛を⁉︎」
愕然とした表情で呟いた万が「嘘よ!」と地面を打った。
「嘘 嘘! 宿儺が愛を知ってるなんて……いったい誰が……⁉︎」
そこで、なぜか万と目が合う。
「まさか……アナタが、宿儺に……⁉︎」
万から迸る強い殺気に、一瞬 詩音の身体が強張った。
『ば、バカなこと言わないでよ。なんで あたしが……!』
「許さない! 許さない! 宿儺に愛を教えるのは アタシよ……‼︎」
液体金属が刃のように伸びてきて、詩音は慌てて印を結ぶ。
『【オン・アロリキャ――……】』
しかし、詩音が身を守るための真言を唱えるより早く、バシャッと液体金属が弾けた。視界に広がる暗い翡翠の翼に、詩音は紅い目を大きく開く。
『【太裳】……⁉︎』
反射的に宿儺の方を見れば、彼は不機嫌そうに眉を寄せていた。
『勝手に俺の玩具で遊ぶなと言ったはずだが?』
「……そんなに その子が大事なの、宿儺⁉︎」
誰もそんな話はしていないだろう。
けれど、万は全く聞く耳を持たない。
「嫌よ! 嫌 嫌……! それは愛じゃない‼︎ アナタは勘違いしてる! 見せてあげるわ、本当の愛の形を‼︎」
――構築してみせる! アタシのハート‼︎
そう叫んだ万の背後に現れた球体に、詩音は息を呑んだ。
* * *