夢幻泡影②【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】アンケート開催中
第19章 決死のフォコーソ【血と油】
「十二年前――天内 理子以外に【星漿体】はいなかったのか? もちろん、アタシは含めるなよ」
『……天内 理子ほどの素質を持った子はいなかった』
天元の回答に、九十九は頬杖をついた。
天内 理子ほどの素質はなくとも、代わりの【星漿体】がいなかったわけではない。
眉を寄せて九十九は考え込む。
狭い和室のコタツに足を入れ、腕を組んだ。傍ではストーブの上に乗せられたヤカンがシュンシュンッと音を立てている。
「なぜリスクを冒してまで同化を拒否したんだ?」
同化しなければどうなるか――それは天元自身が一番 分かっていたはずだ。
【星漿体】と同化することで、天元は不死の肉体を初期化し、単純な加齢による進化を止めていた。進化した自身が人類を害さない保証がなかったからだ。
しかし、天元は――……。
『拒否というより、現実を受容した。だが、同化に失敗した私は進化の果て、自我を肉体の外に伸ばしても、結界術を利用し、こうして理性を保っている。自信があったわけじゃないが……』
季節が変わるように当たり前に、いつかは こうなると思っていたんだ。
そう語る天元に九十九は傍らのヤカンを掴み、湯呑みにお茶を注いだ。九十九はそれを一気に煽り、喉を鳴らして豪快に飲み干すと、深く息を吐き出して天元を睨みつける。
「ふざけるなよ」
低い声で唸るように言葉を紡いだ。
「子どもたちに勝手に業を背負わせ、利用してきた歴史を理性的だと?」
あまつさえ 失敗したら、『同化しなくても大丈夫でした』ときた。
ゴッゴッと湯呑みの底で机を叩き、九十九は苛立ちをぶつける。