第1章 1.
「商品番号15324788
女。年齢は生後10カ月から1歳」
隣に座る者の顔さえよくわからない暗い客席と、煌々と照らされたステージ。
まんまるな月のようなライトの中で、「それ」はよく寝ている。
「持病無し。健康状態良好。
5万からスタート」
司会の男が見上げたステージの液晶に表示されている金額がどんどん上がっていく。
「93,000...93,000!
86番落札」
果たしてその金額に、私が下した「健康優良状態」という判断は、どれほど影響しているのだろうか。
次に出てきたのは、若い女だった。
この女は、妊娠歴どころか性交経験も無い。
怯えた顔で、背後で手を縛られ、枷のついた脚でヨロヨロとステージに上がると、眩しそうに顔を上げた。
なかなか美人だったが、目元の青痣と切れた口元から流れる血が変色していて痛々しい。
診察時には無かった傷だ。
数秒前まで、ステージ脇で抵抗していたのかもしれない。
「15万!16万!
21万!21万が出ました!6番の方!」
他には?と値を釣り上げようと司会が囃し立てる。
「21万円
6番落札」
今日出てきた中でもまあ妥当と言える額だなと、付き人に耳打ちをしている6番札の高齢男性をちらりと見た。
彼女よりも目の窪みが気になる彼の方が診療対象かもしれない。
「商品番号15324192
男。年齢15〜19歳。持病無し。健康状態良好。
中肉中背。10万からスタート」
「診察診断」をした記憶の無い顔だった。
これまでの「出品」から、成人前の男なら7〜8万からが妥当だろう。
なかなかの高額始まりだ、とステージに目を凝らす。
後手で縛られ、下着一枚で膝をつく男は顔を反らして俯いている。
それなりに逞しい腕にはミミズ腫れが多い。
「商品」を運んでくる男に何か耳打ちされていたが、ピクリとも動かない。
次の瞬間、男の手に後頭部を掴まれ、苦痛と眩しさに歪んだ男の顔が、ステージのモニター前面に映された。
「血気盛ん!
若さゆえに跳ねっ返りではありますが、頭脳は優秀です。
身体状態も良く、労働にも夜伽にも使えましょう。
顔の傷は消えます。
数週間待てば、美形を表したかのような美青年になること間違い無しっ」
どうですか、そこのマダム!と司会者が客席を指さした。