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幻想遊園地

第6章 悪魔


それにつれて、空の月明かりは、なおさら強く輝くようでした。その有り様は、青いベールが世界を包んだように見えました。少女の体もまた、美しい月明かりに青く染め上げられていきました。

テラスからしばらくその光景を見つめていた少女でしたが、くるりと悪魔の方を振り向いたのです。冷たく青い光の中、少女の漆黒の髪の毛がふわりと踊りました。

「ねえ、悪魔さん・・・最後のお願い、いいかしら?」
そう言って笑った少女に、悪魔は内心、面食らったのです。

「おい、嬢ちゃん・・・願いは3つだぜ?」
「ええ」
「意味、分かってるのか?」
「もちろんですわ」

いたずらっぽく笑う少女に、悪魔は指先で頬を掻いたのですが、ええいままよと、その願いを聞くことにしたのです。

「んで?なんだ・・・病気を治せとか、そういうやつか?」

半ばやけっぱちです。むしろ、そうであってほしいとさえ思ったのです。
しかし、少女はそっと首を振りました。

「父も、母も・・・
 随分前から疲れ果ててしまっているんです。
 生まれたときから私は病気で、
 ずっと、ずっと縛り付けてしまっていた。
 でも、ふたりとも笑ってるんです。
 ・・・もう私は、十分良くしてもらったんです。」

もう一度、彼女は月を見上げました。

「こんなにきれいなお月様を見られたのですもの。
 ・・・生まれてから、何もできなかった・・・
 誰のためにもならなかった私には・・・
 もう、もらい過ぎなくらいですわ」

だ、か、ら・・・

「悪魔さん・・・ここに来て、一緒に月を見上げてくださいな
 ・・・できれば、そうね、その眼鏡を外してくださいませ」

悪魔はきゅっと唇を噛みました。しばらく視線を泳がせ、ためらう素振りを見せたのですが、ついに、ゆっくりと眼鏡を外すと、テラスの方へと歩を進めたのです。青い月明かりは、少女を染めたのと同じように、悪魔の黒い髪、黒い服・・・そして、その心をも優しく青い光で包みこんでいきました。

そうして彼もまた、少女の横に並んで月を見上げたのです。悪魔は、自分が月を最後に見たのは一体いつだっただろうと考えました。もしかしたら数百年ぶり・・・もしかしたら1000年を超えていたかもしれません。
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