第27章 【脹相】へる日々
気配から察するに八重は食器を洗った後は何の仕事もせずに自室に帰ったようだった。
働き過ぎるなという言葉に八重は了承したものの、それでもその場から自分がいなくなれば仕事をしてしまうのではないかと思っていた脹相だったが、ちゃんと休んでくれたことに安堵した。
そうして脹相もしばし休息をとったものの、夜明けとともに再び八重が忙しなく働き始めた気配を感じて溜息をついて立ち上がった。
再び止めに行くべきか。
昨日の今日でまた八重とぶつかるのも気が引ける。
むしろ夜明けを待っていたように働き始めた八重は休めているのか。
昨日予定していた仕事を朝一気に終わらせることは八重にさらなる負担を強いているのではないか。
であれば、夜通し八重のペースでやる方が負担はないのか。
自室の中をウロウロしたがらそんな考えばかりが脹相の頭の中を巡る。
そればかりかウロウロするのは自室にだけに留まらず、遂には校舎内を歩き回り始めた。
もちろん足が向くのは八重の気配がする方向。
八重は今、庭にいるようだった。
さすがの脹相も昨日のこともあるので庭まで行くことはしなかったが、庭が見える校舎二階の廊下から八重が洗濯を干す様を眺めていた。
が、程なくして五条が八重に声をかけ、一緒に洗濯を干し始めた。
二人の声までは聞き取れはしないが、「五条さん、お上手ですね」と笑顔で褒めているような気がする。
そう思わせるくらい五条の洗濯物を干す手つきは慣れているようだった。
昨夜、八重に窘められた自分との違いに脹相はグッと奥歯を噛んだ。
「あ、脹相?何してんの?」
廊下の向こうから虎杖が声をかけ、歩いてきた。
脹相はパッと窓の外から視線を外す。
「そろそろ朝飯だろう。八重が庭にいるから呼んできてくれ。俺は先に食堂に行く」
そう言って虎杖の返事も聞かずに歩き始めた。
「ん?」と虎杖は窓から庭を見下ろすと、「あぁー」と何かを察したように苦笑いしながら庭に向かった。
(俺が行くより悠仁が行った方が雰囲気も悪くならずに八重も気に病むこともないだろう)
昨日の頭に血が登った自分を省みて、やはり虎杖に頼るしかない脹相はまだ誰もいないであろう食堂に向かった。