第26章 【五条】永遠のコ
事が終わってみれば結構飛沫を浴びていた。
八重に会わないように部屋に戻んなきゃ。
こんな穢らわしいものを八重に見せるワケにはいかない。
今は…そうだな、飯の準備してるってところか。
食堂に近づかなきゃ大丈夫か。
「…ははっ」
最近染み付いた頭の中で八重を探す癖がやけに滑稽に思えて、思わず笑ってしまった。
「先生、どうしました?」
隣いる憂太が、こんな時に笑ってるなんてどうかしてるって顔してる。
僕一人で怪物になろうと思っていたのに、結局生徒達も付き合わせてしまった。
「先生…」
憂太が僕の顔を覗き込む。
「これで八重さんの特級秘匿物の件はなくなりますかね?」
「いやー、それは難しいだろうねー。いくら決定を下したヤツらが死んだからって、もう下された決定だ。おじいちゃんがトップに立ったからってそれをあっさり水に流すなんてことはないだろ」
「じゃあ…」
「水に流しはしないけど、悪いようにもしないだろ。おじいちゃん、八重に胃袋掴まれてるから。それに僕もワガママ言うし」
「なら、大丈夫ですね」
「でもさー、問題は僕が死んだ時だよねー」
「それは…」
憂太は苦い顔をする。
さっきまで「五条先生が死んだらその身体僕が使いますから!」ってちょっとキレてた子とは思えない。
「だからさ、そうなったら憂太もあのコのこと気にかけてくれると助かる」
本当、頼りにしてるよ、憂太。
「…わかりました。でも、僕もダメだった場合は…?」
「それは考えたくもないけど、そん時は呪術界も壊滅的だろうから八重になんて構ってる場合じゃないだろ」
まぁ、そうなったら別の面倒くさいヤツが出てくると思うけど。
「なんだ、悟。お前フラれたのか?」
パンダが何の気なしに訊いてくる。
「僕がフラれるワケないだろ」
告白もしてないんだから。
「僕みたいなナイスガイが一人の女のコのものになったら、それこそ全人類の損失でしょーが」
「お前みたいな変態は一人の女に縛り付けとかねーと全人類が迷惑だ」
真希が手厳しいことを言って、
「しゃけ、しゃけ」
棘が乗る。
「ちょっとさー、まだ見ぬ僕のカノジョのこと人柱みたいに言わないでくれる?」
そんな青臭い話を暗い廊下に響かせながら、いつまで続くのか不明瞭な日常へ向かう。