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【呪術廻戦】誰も知らない

第25章 いとほし日々[後編]


そして、また日常に戻っていく。
八重は虎杖が隣にいるとそれだけで自然と人の輪に組み込まれていった。

「八重さん、いつも洗濯とかご飯とかありがとうございます」と乙骨が言い、
「八重、今日の飯も美味かったけど、もうちょっとジャンキーなのはできないのか?」と真希がリクエストし、
「八重、僕のおやつは?」と五条がすり寄ってくる。
綺羅羅は「ちょっと八重ちゃん、聞いてよ〜」と秤の愚痴を言いに来たり、
来栖は「八重さん、お裁縫とか出来ます?」と服のほつれを直しにやって来たり、
高羽は「八重さーん、新しいギャグ思いついた!」と見せに来る。

八重にとっては今まで経験したことがないような人との関わりは毎日が新鮮だった。
時には声を出して笑うほど。
この1000年で一番。

そして、何より嬉しかったのはそれを脹相が穏やかな顔で見ていてくれることだった。
八重がいろいろな人と交流するのを喜んでくれているように感じて、そうであるならばと八重も一生懸命関係を築こうとしていた。

いろいろな人に名前を呼ばれるようになった。
もう八百比丘尼を名乗らなくてもいいほどに。

けれども。

「八重」

脹相に呼ばれる名前は格別に胸に響くのは相変わらずで。
それだけで胸が温かくなるのも変わらない。

「はい」

八重が返事をして脹相に寄れば、柔らかい表情を見せてくれる。
それはまるで大切な弟である虎杖に見せるような表情で。
まるで自分も脹相にとってそういう存在になれたような気がして。
それが何より嬉しい。

いつまでもこんな日々が続けばいいと思ってしまう。
この幸せな日々は嵐の前の、束の間の平穏でしかないのに。
もう少しで手放さなければならないものなのに。

愛おしいと思ってしまう。
失いたくないと思ってしまう。
これが愛というものなのかとしみじみ思う。

だから、言ってしまったのだ。

愛おしいと思って。
失いたくないと思って。
愛なのだと思って。

自分を抑えることの出来ない満月の夜に。
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