第5章 『極上ミルク』の正体
女子高生の懸命な訴えも、結局は既に出尽くした情報ばかりだった。
手がかりは霧の中へと消え、爆豪の苛立ちだけが事務所の空気を焼き焦がしていく。
「帰宅途中の失踪、目撃者なし……綻びが深すぎるな。お嬢さん、後は我々に任せて、君は日常に戻りなさい」
ジーニストは女子高生を諭して帰らせると、隣で爆発寸前の爆豪を鋭い視線で制した。
それからジーニストは独自のネットワークを駆使し、裏社会の「繊維」を一本ずつ手繰り寄せていった。
「……爆豪。準備はいいか。最悪の『綻び』を見つけた」
数日後、ジーニストがデスクに放り出したのは、盗撮されたと思わしき粗い画像と、傍受された音声データだった。爆豪は無言で、食い入るようにその資料を睨みつける。
「ここ数週間、裏社会の闇市で、ある『商品』が爆発的に流通している。――通称、『極上ミルク』」
「……ミルクだと? そんなもんが何だってんだよ」
「ただの飲料ではない。摂取したヴィランの傷を癒やし、個性を一時的に爆発させる、おぞましいドーピング剤だ。そして……」
ジーニストが再生した音声データから、下卑た男の笑い声が漏れる。
『――今朝の搾りたてだ。あのガキ、ナカを掻き回してやればやるほど、甘い雫を乳から吐き出しやがる』
「……ッ!!!」
爆豪の足元の床が、衝撃波でひび割れた。
「搾り取る」という卑俗な響き。
爆豪の脳裏に、無理矢理抱いたあの日の幼馴染の顔が浮かんだ。
「この流通が始まった時期、そして製造源とされる場所の噂……。行方不明になった君の幼馴染、と時期が完全に一致する」
「……あいつを、……あいつをそんな、薄汚ぇ連中の道具に……ッ」
「爆豪、理性を保て。これ以上はヒーローの領分だ。場所は割り出した。そこは、人間を人間として扱わない、倫理の崩壊した『搾乳場』だ」
ジーニストの言葉が終わる前に、爆豪の手のひらからはパチパチと火花が散っていた。
怒りで瞳孔は収縮し、呼吸は獣のように荒い。
「場所を教えろ、ジーパン……。殺す。一匹残らず、塵も残さねぇ……ッ!!」
爆豪の咆哮が、事務所の壁を震わせた。
大切だった幼馴染が、男たちの白濁を飲まされ、蹂躙されながらミルクを搾り取られている。
その地獄の光景を想像するだけで、彼の心臓は怒りの熱で溶けそうだった。
