第5章 『極上ミルク』の正体
「失礼します……。あの、警察の方には言ったんですけど、どうしても諦めきれなくて……」
ある日、爆豪が体験実習をしていたベストジーニストの事務所に訪れたのは、一人の女子高生だった。
彼女の震える手には、一枚のプリントが握られていた。
「どうした、お嬢さん。ここは人生の綻びを繕う場所だが、あまりに顔色が悪い」
奥から現れたジーニストが、静かに問いかける。
その背後には不機嫌そうに佇む爆豪がいた。
「友達が……1ヶ月前から、行方不明なんです。学校帰りにカフェで別れてから、そのまま。警察は『家出の可能性も捨てきれない』って……でも、あの子がそんなことするはずないんです!」
彼女が差し出したプリント。
そこには、あの日、カフェの前で最高の笑顔を浮かべていた****の姿があった。
「――ッ!?」
爆豪の喉が、音を立てて鳴った。
鋭い視線が、その写真に釘付けになる。
「……おい、お前。……今、なんて言った。その、行方不明の奴の名前は」
「え……? ちゃんです。私、あの日も一緒にいて……あの子、新しい高校生活が楽しいって、笑ってたのに……っ」
爆豪の周囲の空気が、一瞬で爆ぜるような熱を帯びた。
「クソが……ッ!!」
一歩、また一歩と、爆豪が女子高生に詰め寄る。
その瞳には、かつてないほどの焦燥と怒りが混濁していた。
「おい、そのカフェはどこだ! 最後に別れた場所を吐け!!」
「爆豪、止まれ。規律を乱すな」
今にも飛び出そうとした爆豪の肩を、ジーニストの繊維が強引に拘束した。
「放せ、ジーパン……ッ! そいつは、俺の……!!」
「落ち着け。ただならぬ反応だな。……彼女は、君にとって何者だ」
ジーニストの静かな、だが逃げ場のない問い。
爆豪は奥歯を軋ませ、絞り出すような声で言った。
「……っ、幼馴染だ!」
爆豪の拳が震えていた。
その彼女が、裏の世界で『極上ミルク』というおぞましい噂の種にされているとは、今の彼はまだ知る由もない。
「幼馴染か。ならば、感情に任せて動くのは二流だ。……爆豪、その『綻び』を直したいのなら、まずは情報を整理しろ」
ジーニストの言葉に、爆豪は激しく呼吸を乱しながらも、殺気立った瞳で女子高生を睨みつけた。
「……全部、一文字残らず話しやがれ。あいつが消えた、その日のことをな」