第11章 彼は彼女の心を救いたい 【ONE PIECE マルコ】
甲板には、重苦しい空気が立ち込めていた。
サッチの遺体を前に、白ひげが静かに目を閉じている。そこへ、エースが燃え盛る火柱のような気迫で歩み出た。
「オヤジ……俺が行く。俺の隊の部下がしでかしたことだ。……あいつを、殺してくる」
「待て、エース。今回は妙な胸騒ぎがする……。追わなくていい、今回だけは……」
白ひげの言葉に、エースの顔が怒りで歪んだ。
「何を言ってんだ! あいつは『鉄の掟』を破って家族を殺し、あんなに良くしてくれたいのりを……あの野郎、サッチの目の前で、無理やりあいつを汚したんだぞ!!」
「エースさん、待って……! 行かないで!!」
医務室から這い出してきたいのりが、マルコに支えられながら必死に声を張り上げた。
「……あの時のティーチさんは、何かがおかしかった! 闇みたいな、底知れない力が……! お願い、行かないで、エースさん!」
「……ごめんな、いのり」
エースは振り返らず、ただ拳を握りしめた。
「お前にあんな思いをさせた野郎を、のうのうと生かしておけるほど、俺は物分かりが良くねェんだ。……白ひげの名にかけて、必ず落とし前をつけてくる」
「エース! 止まれよい!」
マルコの制止も、仲間の叫びも、エースの背中には届かなかった。
彼は小舟を海へ降ろすと、一度も後ろを振り返ることなく、猛烈な火力を推進力に変えて、霧の向こうへと消えていった。
「エース……さん……っ」
甲板に泣き崩れるいのり。
マルコはその背中を支えながら、遠ざかる火の色を、ただ苦い表情で見つめることしかできなかった。