第11章 彼は彼女の心を救いたい 【ONE PIECE マルコ】
ある日の午後、小規模な海賊団との小競り合いを終えたサッチが、戦利品を手に意気揚々と降板へ戻ってきた。
「おい、みんな見てくれ! 敵船の奥にこんなもんが隠されてたぜ!」
サッチが掲げたのは、奇妙な渦巻き模様が描かれた、禍々しくも神秘的な紫色の果実だった。
「へぇ、悪魔の実じゃねェか。……何の実だよい?」
「さあな? 図鑑と照らし合わせてみねェとわからねェが、こいつはなかなかの掘り出し物だぜ!」
サッチが豪快に笑い、いのりも「不思議な形の果物ですね」と興味深げに覗き込む。
エースも「食うか? サッチ」と茶化して、降板はいつものように明るい笑いに包まれていた。
「グラララ! サッチ、そいつは手に入れたお前の自由にしていいぞ」
白ひげの許しも得て、サッチは「よし、次の宴の肴の話題にするか!」と、その果実を大事そうにカウンターへ置いた。
しかし。
その賑やかな喧騒から少し離れた、影の濃い場所。
一人の大男が、暗い瞳でその果実をじっと見つめていた。
「…………ゼハハ……」
喉の奥で、低く、湿った笑い声が漏れる。
ティーチ——黒ひげ。
彼は、サッチの手にあるその「闇」を湛えた実を、何十年も待ち続けていたのだ。
「やっと見つけた……。ようやく俺の手に、運命が巡ってきたか……」
ティーチの視線は、サッチ、そして彼の隣で無邪気に笑ういのりへと向けられる。
「……あ、ティーチさん? どうしたんですか、そんなところで」
ふと気づいたいのりが声をかける。
ティーチは瞬時にいつもの「気のいい仲間」の表情を作り、ニタリと笑った。
「いやぁ、いのりちゃん。いい実が見つかってよかったと思ってよぉ……。今夜は、忘れられない宴になりそうだな……ゼハハハ!」
その笑い声の裏に潜む冷徹な殺意に、まだ誰も気づいていなかった。