第11章 彼は彼女の心を救いたい 【ONE PIECE マルコ】
バクバクと気持ちいいほどに食べるエース。
その食べっぷりを見ていると、いのりは心から「作ってよかった」と幸せな気持ちになれた。
自分が必要とされている。誰かを喜ばせている。
それは、かつての世界では決して得られなかった実感だった。
「おいおい、エース。いのりちゃんを独り占めするなよ。俺の分のデザートはどうした!」
「サッチ、てめェ自分で作っただろ!」
賑やかな言い争いを聞きながら、いのりは皿を洗い、ふと横にいたマルコと目が合った。
「……居場所、見つかったみたいだね。よかったよい」
マルコが静かに微笑むと、いのりは深々と頭を下げた。
「はい。皆さんのおかげです。私、ここに来られて……本当に、よかったです」
彼女の心に深く刺さっていた「呪い」の棘が、大家族の温かさと、美味しい料理の湯気の中で、少しずつ、少しずつ溶け始めていた。
白ひげ海賊団という巨大な家族の中で、いのりはいつしか「一番の末っ子」として、エースと共に皆から愛される存在になっていた。
「マルコさん、次はあちらの怪我人の方ですね?」
「ああ、頼むよい。……あんたも手際が良くなったね。もう立派なうちのナースだ」
いつも穏やかに自分を導いてくれるマルコには、兄のような、あるいは父のような深い信頼を寄せ、師匠であるサッチからは料理の奥深さと「楽しむ心」を学んだ。
そして同年代のエースとは、甲板で笑い転げ、時には追いかけっこをするような、親友のような絆で結ばれていた。
時折、他の海賊団が「白ひげ」の名を恐れず襲撃してくることもあったが、彼女が怯える間もなく、隊長たちが一捻りで片付けてしまう。
「大丈夫か、いのり! 怖くなかったか?」
「はい、エースさん! 皆さんが強すぎて、なんだか頼もしいです!」
かつて、屋敷の奥で震えていた少女の面影はどこにもない。彼女は今、太陽の下で年相応の輝きを取り戻していた。