禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第11章 彼は彼女の心を救いたい 【ONE PIECE マルコ】
混乱が落ち着くまでの数日間、いのりは医務室の奥にある個室で過ごすことになった。
マルコは彼女の深い心の傷を察し、野郎共を一切近づけないよう「厳戒態勢」を敷いたのだ。
代わりに彼女の世話を焼いたのは、白ひげ海賊団の誇る肝っ玉の据わったナースたちだった。
「ほら、いのりちゃん! 今日は顔色がいいじゃない。しっかり食べなきゃダメよ!」
「あ……はい。ありがとうございます」
「もう、そんなに畏まらなくていいってば。ほら、血圧測るわよ。腕出して!」
最初は男以外の人間にも怯えていたいのりだったが、バイタリティの塊のような彼女たちに揉まれるうちに、少しずつその表情には柔らかな光が灯るようになっていた。
ある日の午後、マルコが様子を見に訪れた。
「……お、いい顔だよい。外の風、当たってみる勇気はあるか?」
「マルコさん……。はい。皆さんが守ってくれるから、大丈夫です」
マルコに連れられ、数日ぶりに甲板へと足を踏み出す。
扉が開いた瞬間、目に飛び込んできた光景に、いのりは息を呑んだ。
「……っ、わあ……!」
どこまでも続く青、高く突き抜ける空、そしてキラキラと宝石を散りばめたような海面。
禪院の屋敷の、暗く閉ざされた天井とは正反対の、果てしない開放感。
「すごい……。海って、こんなに広くて、綺麗だったんですね……」
「そうだろ? 窮屈な世界にいたあんたには、毒が強すぎるくらいの自由だよい」
横で見守るマルコの瞳が、彼女の純粋な笑顔を見て少しだけ細められた。
しかし、その感動は「ある存在」の前に立った瞬間、驚愕へと変わる。
「……っ!!」
甲板の中央、巨大な椅子に鎮座する巨躯。
見上げるほどに大きな、白ひげ海賊団の長。
「グラララ……。ようやくツラを拝めたな、娘っ子」
「あ、う……」
あまりの大きさと圧倒的な存在感に、いのりは金縛りにあったように固まってしまった。
山のような、しかし静かな威厳。
「おいおい、そんなに固まるなよい。こう見えても気のいいジジイだ」
マルコが苦笑いしながらフォローを入れるが、いのりは口をパクパクさせるばかりだ。
その様子がおかしかったのか、白ひげはさらに豪快に笑った。