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禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー

第11章 彼は彼女の心を救いたい 【ONE PIECE マルコ】


清潔な白に囲まれた医務室。
マルコは医者としての顔に戻り、手際よく彼女の拘束を解き、傷を洗浄していく。

「……ん、ぁ……」

消毒液が染みたのか、いのりが小さく声を漏らした。
怯えたように睫毛が震える。

「大丈夫だよい。ここはもう、あんなひどい真似をする奴はいない」

マルコの声は、いつになく穏やかで温かかった。
彼は「不死鳥」の炎を小さく指先に灯し、彼女の全身に広がる痛々しい痣にそっと触れていく。

「……なお、や……さん…ごめんな……さい……」

うわ言のように紡がれた名に、マルコの手が止まる。
彼女がどんな世界で、どんな「呪い」の中にいたのか、今の彼には知る由もない。
だが、その声に含まれた底なしの恐怖が、彼の胸を締め付けた。

「『ナオヤ』か。どこのどいつか知らねェが……」

マルコは彼女の乱れた髪を優しく撫でつけた。

「二度と、あんたに触れさせやしないよい。……ゆっくり眠りな、お嬢さん」

その夜、モビー・ディック号の医務室の灯りは、夜が明けるまで消えることはなかった。




窓から差し込む朝陽が、白く清潔なシーツを照らしていた。

重い瞼を押し上げたいのりが最初にしたのは、自分の腕が自由であることを確かめること、そして、すぐ側に「男」の気配を感じて短く悲鳴を上げることだった。

「ひっ……! 嫌、ごめんなさい、直哉さん……!」

ガタガタと震え、ベッドの隅まで這って逃げようとする彼女に、椅子に座っていた男——マルコが、両手を上げて穏やかな声を出す。

「おっと、怖がらせるつもりはねェよい。落ち着きな、お嬢さん」
「……あ……」

目の前にいるのは、あの傲慢で冷酷な男ではなかった。
眠たげな眼差しに、どこか超然とした、それでいて温かい空気を感じさせる金髪の男。

「……あなたは……?」
「俺はマルコ。この船の医者だ。あんた、ひどい怪我で倒れてたんだよい。覚えてるか?」
「医者……。あ、あの……私は……」

いのりは混乱したように辺りを見渡した。
見覚えのない、木の温もりのある部屋。
窓の外からは、聞き慣れない波の音と、鳥の鳴き声が聞こえた。



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