第10章 彼は彼女を取り戻したい 【ONE PIECE ロー】
男たちが檻の鍵をかけ、酒の臭いと共に去っていく。
静寂が戻った檻の中で、いのりは震える手で自分の体を抱きしめた。
(……また、汚された、……私、もう……)
溢れ出す涙を止めることもできず、彼女はただ、今も心の中でその名を呼び続ける。
(……ローさん……っ!)
「レディース・アンド・ジェントルメン! さあ、本日の目玉の一つだ。この透明感、この儚さ! どこか遠い異国から迷い込んだ、神秘の美少女——!」
ステージのカーテンが開いた瞬間、会場の空気が熱を帯びて膨れ上がった。
スポットライトに照らされたいのりは、震える手で自身のワンピースの裾を握りしめている。
首元には、無機質な鉄の首輪。
情事の余韻を無理やり引きずらされた身体は、皮肉なことに、その痛々しくも色香を孕み、彼女の「商品価値」をさらに跳ね上げてしまっていた。
「……っ……、……」
客席を見渡しても、見えるのは欲望にギラついた目、目、目。
かつて禪院の屋敷で受けた視線と同じ、自分を「モノ」としてしか見ていない瞳の群れに、いのりは眩暈を覚えた。
「さあ、オークション開始だ! スタートは1500万ベリー!」
「1700万だ!」
「2000万!」
価格は瞬く間に跳ね上がっていく。
いのりは恐怖で目を閉じた。その時——。
「——1億ベリー」
会場が水を打ったように静まり返った。
声の主は、客席の中段で不敵に足を組む、あの特徴的な帽子を被った男。
「1億……っ! ハートの海賊団、トラファルガー・ロー、一気に倍以上の1億ベリーを提示ィ!!」
いのりは息を呑んだ。
ローは帽子を深く被り直し、表情を読ませないまま、ただ一点彼女だけを見つめている。
会場が静まり返り、司会者がハンマーを振り上げた、その時だった。
「——2億ベリーえ。」
鼻にかかった、ひどく傲慢な声。
最前列の特別席。
水槽を被った天竜人、チャルロス聖が鼻を垂らしながら指を立てた。
「あの女、いい色気を出してるえ。私の『コレクション』に加えて、飽きるまで弄んでやるえ」
「に、2億……! 天竜人、チャルロス聖が2億ベリーを提示されました!!」
会場にどよめきが走る。
ローの隣で、ベポが絶望的な声をあげた。
「キャプテン……! 2億なんて……これ以上はもう……!」
