• テキストサイズ

禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】

第7章 潜入捜査官の彼は彼女に助けられる 【名探偵コナン 諸伏景光】


雨に濡れたコンクリートは冷たく、肺に吸い込む空気はひどく排気ガス臭い。
つい先程まで彼女の肌を焼いていた、直哉の嗜虐的な熱と、まとわりつくような不快な呪力はもうどこにもなかった。

「……は、ぁ……っ」

ボロボロの服ははだけ、肌には執拗につけられた痕が赤黒く浮かんでいる。
術式も呪力も持たない彼女は、あの家ではただの「道具」だった。
逃げ出したかった。
どこでもいいから、あの地獄以外の場所へ。
その願いが、得体の知れない「光」を呼び寄せたのだろうか。
朦朧とする意識の中、規則正しい足音が近づいてくるのが聞こえた。

「――おい、大丈夫か」

頭上から降ってきたのは、直哉の傲慢な声とは正反対の、低く、けれど驚くほど穏やかな声だった。
見上げれば、フードを深く被り、背中に大きなギターケースを背負った男が立っている。

「……だれ……」

彼女が震える声で問うと、男――スコッチは絶句した。
街灯の光に照らされた彼女の姿は、あまりに凄惨だったからだ。
無理やり組み敷かれたことが一目でわかる乱れた衣類、そして虚ろな瞳。
スコッチは潜入捜査の真っ最中だった。
ここで目立つ行動を取るのはリスクでしかない。
だが、目の前で壊れそうな女を放っておけるほど、彼は非情な男ではなかった。

「……ひどい有様だな。安心しろ、俺はあいつらの仲間じゃない」

スコッチは周囲を警戒しながら、自分の脱いだジャケットを彼女の肩にかけた。
組織の人間としての冷徹な仮面の下で、諸伏景光としての良心が疼く。

「場所を移そう。歩けるか? 無理なら……俺が運ぶ」


彼に抱き上げられた時、彼女は反射的に体を強張らせた。
男の腕は、また自分を汚し、閉じ込める檻のように思えたからだ。
しかし、スコッチの腕は驚くほど優しく、ただ彼女を支えるためだけにそこにあった。




/ 154ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp