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【呪術廻戦】呪いの嫁入

第4章 『やくそく』


「沢山祓えば、いつか津美紀ちゃんの呪いが解けるかもしれない。
祓うのが私じゃなくても、数を減らせば、」


言葉が、止まらなかった。


呪霊は人の感情から絶え間なく生まれ続ける。
どれだけ数を減らしたところで、すぐ元に戻る。
そんなことは、痛いほど分かっている。


それでも。
何もできないまま終わったら、私はきっと、私自身を許せなくなる。


「苧環さん。一旦、落ち着いて」
「無理です……! ごめんなさい、いまは、無理なんです」


補助監督さんの制止を振り切るように、首を何度も横に振った。

大切な人が呪われて、冷静でいられるはずがない。


守りたかった。
守れると思っていた。
守らなきゃいけない人だった。


それなのに────また、守れなかった。


「津美紀を呪った犯人は、俺も全力で探す。だから、お前は今まで通りでいい」
「それで、間に合わなかったら……?」


声が震えるのを、止められなかった。

もし、一分一秒を争う術をかけられていたら。
そう考えただけで、喉の奥がぎゅっと締めつけられる。


一緒に飲んだジュースの甘さ。
四人で祝った誕生日。
何気ない買い物帰りの夕焼け。


当たり前みたいにそこにあった日常が二度と戻らないかもしれないなんて、耐えられなかった。


「……苧環さん。こんな時に申し訳ないのですが、追加で任務が」


外で待機していた補助監督さんが、眉尻を下げて病室へ入ってくる。


「行きます」


そう言って恵くんに背を向けて歩き出そうとした瞬間、腕が後ろに引かれ足が止められた。


「俺も行く。お前、無茶するだろ」

「すみません……。伏黒くんにも、別件で任務が入っていまして」


胸の奥で、小さく息を吐いた。


今の私は、きっと酷い祓い方しかできない。

そんな姿を、恵くんには見られたくなかった。


病室を出る直前。私は津美紀ちゃんの小指に、そっと赤いリボンを結ぶ。


「……何かあったら教えてね。…私、すぐ駆けつけるから」


自分の術式を組み込んだそのリボンは、津美紀ちゃんに危険が迫った時だけ私に知らせてくれる。

額にそっと自分のそれを重ね、祈るように、唱えるように呟いた。


「行ってきます」


帰ってきたら、津美紀ちゃんの目が覚めていますように。

いつもの笑顔を、また見られますように。
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