第20章 神業
この運用が主流になれば、数が減り続ける一方である術師の人手不足は、多少なりとも改善されるのかもしれない。
………それでも。
(………ダメだ。これは、……この術式の使い方は、ナマエには負荷が大きすぎる)
また約束をして、今すぐにでも縛らなければ。
そうしなければ、ナマエはその底無しの優しさのまま……いつかどこかで、他人のために命を擦り減らして勝手に壊れてしまう。
───それだけは絶対に、僕が許さない。
「ナマエ、」
「…!!」
どうやって縛ろう。
そんな不穏で暗い独占欲を脳内で転がしながら、僕はベッドの上のナマエの名前を呼んだ。
だけど、僕の声音に振り返ったナマエの表情は───これまで出会ってから見たどんな表情よりも、誇らしげに、キラキラと輝いていて。
「五条さん…!!私、また新しいことが出来るようになりました…!!ちゃんと、治せました…!!」
「……、」
そんな顔で、そんな声で。全てを見ていた僕に嬉しそうに報告をするナマエを見て、『もうするな』の言葉を飲み込んだ。
すぐそこまで出かかっていたはずなのに。
こんなにも愛らしく、自分の成長を一番に僕に褒めてもらおうと見上げてくるナマエに、一体どうやって否定の言葉を投げつけろというのか。
「……うん。見てたよ」
「…!!あのっ、わたし、これでもっと五条さんの役に立てますか…!!」
なにそれ。
ナマエなんて、もう生きてるだけで僕のためになってるってのに。
必死に僕の背中を追いかけて、置いていかれないようにと小さな手で僕の服の裾を掴んで、無邪気に笑って。
……ナマエは、出会った頃から全く変わっていない。
「………よくやったね。凄いよ、お前は」
「……?」
たったそれだけの掠れた本音を零して、僕は心の中の不穏な感情を誤魔化すように、ナマエの髪を何度も、何度も優しく撫でた。
愛しさ故に縛りたいのに、親であるが故に許されない。
この矛盾した葛藤も、甘い後悔も、僕はこれから何度も味わうことになるのだろう。
……それでも、今この瞬間だけは。
僕は親として、ナマエの命懸けの成長を隣で誰よりも喜んで、優しく抱きしめてあげるしかなかった。