第19章 いつか、また
「五条さん!」
カードを受け取った野薔薇ちゃんが満足げに下がったのを見計らい、一歩前に出て声をかける。
すると五条さんはサングラスを指先で少しだけずらして、優しくこちらへと振り返った。
「ナマエ〜!!それ僕がプレゼントしたやつ!?超〜〜似合ってる!!かわい〜!!!」
「ほ、ほんと……?」
「ホント!!はぁ……生地から選んで特注した甲斐があったよ……」
さらりと とんでもないことを呟きながら、五条さんは手慣れた手つきで携帯を掲げ、ものすごい連写速度で絶え間なくシャッターを切り始めた。
(特注……?浴衣って特注とかあるんだ)
五条さんのあまりの喜びように嬉しくなって、なんとなく片方の袖を持ち上げてそれっぽくポージングしてみせる。
すると五条さんはさらに上機嫌に口角を上げ、上から下から、斜めから、と角度をせわしなく変えながら、パシャパシャと写真を撮り続けた。
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撮影タイムが五分を超え、表情を維持する私の口角が限界を迎え始めた その時。
「下にタクシー着いたんで、続きは後にしてもらえますか」
携帯端末を片手に、少し低めの声音で割り込んできたのは恵くんだった。
「え〜……。んじゃ、最後に恵とナマエのツーショット、ちょーだい♡」
「嫌です」
きゅるん、と効果音がつきそうな程にあざとく顔の横で両手を組んだ五条さん。
それをそっけなくあしらった恵くんにぐいっと腕を引かれ、私は履き慣れない下駄の足元に注意しながら、高専の長い石階段を慎重に降りていく。
「恵ぃ〜!!一枚でいいから撮らせてよ〜〜!!ソレ僕が買ってあげた浴衣でしょ???」
「嫌です」
「同じことしか言わないじゃん。ボットかよ」
私たちのすぐ後ろをピッタリと付いてきながら、終わりの見えない不毛なやり取りを続ける五条さんと恵くん。
その言い合いの間にも背後から聞こえる連写音には、突っ込まない方がいいのだろうか。
「ねぇ、一枚くらい、いいんじゃないかな」
恵くんの横顔を見上げて小さな声で説得を試みてみたけれど、恵くんは前を向いたまま、分かりやすく嫌な顔をした。