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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第12章 傷と夜空


医務室は、静かだった
消毒薬の匂いが、空気に薄く張りついている

ベッドの上に、灰原は横たわっていた
布に覆われたその姿は、あまりにも静かで
ついさっきまで笑って喋っていた面影が、どこにも見当たらない

任務は、五条悟が引き継いだと聞いた
到着して、ほどなく
文字通り、難なく祓ったらしい

そうだろうなと七海は思う
理屈では、納得できてしまう

―もう、あの人だけでいいんじゃないか


胸の奥に浮かんだその考えを、口にしていた
灰原なら、きっと笑って否定しただろう

「七海、そんな事、言わないでよ」って

だが、もうその声は聞こえない
前向きな言葉は二度と七海に向けられない

暫くして、ふと気付く
そういえば…

自分たちを助けに入った、流鏑馬先輩はどうなった
同じ医務室にいた夏油に、七海は視線を向けた

「流鏑馬さんは…」

夏油は一瞬、言葉を選ぶように間を置いた
「紅海の事は、今は心配するな」
「…そんな訳には」

抑えた声でも、感情は隠しきれなかった
夏油は小さく息を吐く
「はぁ…今、治療中だよ
自力で、何とか退避できたらしい」

その“何とか”の裏にある無理を、七海は察してしまう
「七海、今日は休め…大変だったろ」
その言葉に、七海は何も返せなかった

翌日
治療中の紅海の元を訪れた
高熱が続いていると聞いた
身体には呪霊による傷の手当てが施されている

ベッドに横たわる彼女は、酷い状態だ
どれだけの時間、自分達のために戦っていたのだろう

七海は椅子に腰を下ろし、黙ってその横にいた
声を掛ける勇気も、触れる勇気もない

暫くして
掠れた息のような声が聞こえた

『…な……なみ…』

七海は、はっとして身を乗り出す
「…っ」
すぐに人を呼んだ
医療スタッフが動き、硝子も駆けつけてくる

慌ただしくなる室内の中で
紅海は再び、意識を失い、ゆっくりと眼を閉じる

その少し後
任務帰りだったらしい夏油が、息を切らして現れる
「紅海は…?」
「今、処置中…でも、何とか大丈夫そう」
硝子が答える

夏油は安堵と緊張の混じった表情で、ベッドを見つめた

その場に、もう一人来るはずの人物
五条悟だけ、姿を見せなかった

「あの、五条さんは?」
「悟は任務が多くて教室にも顔をだしてないんだ」
七海は妙に納得する
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