第11章 目覚めと目覚め
簡単な朝食がテーブルに並ぶ頃、
紅海は勢いよく床に手をついていた
『まったくもって!!
クソご迷惑をお掛けしましたぁぁあ!!』
昨日の甘えた声色はどこへやら
背筋を伸ばした、反省一色の土下座モードだ
「どこかの海賊コック並みの土下座…」
五条はマグカップを片手に、あくび混じりにそれを眺める
「別にいいって言ってるでしょ?
嫌なら迎えに行ってないし
そもそもさ、僕が七海に紅海を送って貰うのが
単に嫌だっただけだからね」
さらっと言う…
七海建人が紅海に向ける、静かで誠実な視線を
五条が見逃していない事を紅海は知らない
『…七海に?』
顔を上げ、きょとんとする
本当に、理由が解っていない顔だ
五条はそれ以上踏み込まず、話題を切り替えるように言った
「…そういえばさ」
ふと、土下座と共に見えた紅海の髪に視線が落ちる
「その髪の…珍しいじゃん」
紅海は反射的に、シュシュに触れた
『あ、これ?ほら、あの時、遊佐くんがくれたプレゼントの中身』
少し照れた様に、えへへと笑う。
「…ふーん」
五条のテンションが一気に下がる
自分は何も用意していない
誕生日だと知っていたし、頭の片隅には、ずっとあった
それでも忙しさを言い訳に、何も選ばなかった
五条は視線を逸らし、素直に言う
「僕からのプレゼントはさ
悪いけど、特に用意してないよ」
紅海は、すぐに首を横に振った
『悟、忙しいんだから!
全然、わたしの事なんか気にしなくていいんだよ』
無意識に、自分を後回しにする癖
『それに…迎えに来てくれた事が
もうプレゼントみたいなもんだしね?』
ふふっと、柔らかく笑う
その言葉が、五条の胸に静かに刺さった
そんな安い扱いしていい存在じゃないだろ
昨夜、目覚めた感情が、はっきりと形を持ち始めている
誰にも譲るつもりはない
それでも、奪う権利もない
五条はマグカップを置き、いつもの調子で言う
「…じゃ、また今度、奢るからチャラって事で
二日酔いもないんでしょ?
せっかく作ったんだし、食べていきなよ?」
『うん!体調は絶好調!
じゃぁ、ありがたく頂きます!』
ピース!と紅海
五条は無邪気さに、思わず小さく笑い
紅海を愛おしく感じる
朝の光が、二人の間を静かに照らしていた