第47章 片道と寄り道
紅海は黙り込んだ
慌てて否定することも、冗談にすることもできなかった
だって、嘘ではないから
悟と一緒にいると楽しい
嫌なことがあっても、いつの間にか気持ちが軽くなっている
自分ではどうにもならないと思っていたことまで、少しだけ違う見方ができる
そういうところが好きだ
そして、できることなら、この先も
ずっと、悟の隣で笑っていたい
そう思っている
紅海は、しばらく黙ったまま、自分の気持ちを確かめるように考えていた
五条は、しばらく何も言わなかった
“こうやって、ずっと悟と一緒にいられたら良いのになぁって”
紅海の声が、まだ耳に残っている
――ずっと、一緒に
胸の奥が、じんわりと熱くなった
嬉しかった
思っていた以上に
紅海が自分と過ごす時間を、そんなふうに思ってくれていたことが
自分が隣にいることで、彼女が少しでも前を向けるのなら
それは、五条にとっても望んでいたことだった
「……」
何か言わなければ
いつもなら、こんなときこそ余計な一言を挟んで、紅海の反応を見て楽しむところだ
けれど
昨夜の電話が、ふいに頭をよぎった
五条家の将来
身を固めろという、あの話
僕は、何を考えてるんだろうね
自分の気持ちは、とっくに決まっている
紅海が好きだ
ただ隣にいてほしいと思う
彼女が笑っていると、つられて笑ってしまうし、楽しそうに話していれば、もう少し聞いていたくなる
今だって、本当なら
“僕もだよ”
そう答えたかった
けれど、その先を考えた途端、言葉が喉につかえた
五条家は、最強である自分を中心に物事を考えている
その自分が、誰かを特別な存在として選んだら
その相手が、どんな立場に置かれることになるのか
五条家だけではない…もしかすると他の対立した存在が動き出したら?
五条は、ほんの少しだけ目を伏せる
そして、黒い目隠しを目元に当てた
顔を上げたときには、いつもの笑みを浮かべていた
「……なに、それ
そういう、あんまり期待させるようなこと言わないでよ」
ロールカーテンの向こうから小さく聞こえた言葉が聞き取れなかった
『え?』
「だからさ、紅海さぁ、僕のこと好きすぎない?」
冗談めかして、いつもの調子で…