第46章 秋の香りと想い
その後も、食事は賑やかに続いた
焼きそばを追加し、豚玉を分け合い、鉄板の上で焼ける音を聞きながら、他愛のない話をする
自然と仕事の話に移っていった
伊地知は運転手なので酒を飲まず、烏龍茶を片手に話を聞いている
遊佐は、補助監督同士だからこそ分かる苦労について、伊地知にいくつか質問していた
「伊地知さんは、現場の調整も多いでしょう?術師の方々の予定を合わせるだけでも、大変やないですか?」
「そうですね……上からの指名の術師もいれば、急な変更もありますし、任務の状況によっては予定どおりにいかないことも多いですから」
「それでも、きちんと回してはるんがすごいと思いますよ」
「い、いえ!私は、皆さんに助けていただいているだけです」
「その『助けていただいている』の中には、五条さんも含まれてるんですか?」
遊佐が尋ねると、伊地知は一瞬、言葉に詰まった
「……五条さんは、確かに非常にお強いですし、頼りになる方ですが……」
「けど?」
「……いえ、何でもありません」
「伊地知、今なんか言いかけた?」
五条が横から顔を出す
「いえ! 何も!」
「ふーん?」
五条は追及することなく、あっさり引き下がった
その代わり、隣の紅海を見た
『ん?どうしたの、悟?』
「いや…紅海、梅酒飲んでるなぁと思って、久々の飲みだからって調子乗りすぎてない?」
『だってこれ、美味しいよ?』
紅海の前には、梅酒のグラスが置かれていた
一杯目は、食事の合間にゆっくり飲んでいた
二杯目も、特に変わった様子はなかった
三杯目になる頃には、頬にほんのり赤みが差していたが、本人はいたって元気だった
そして現在
四杯目
「……流鏑馬さん」
七海がグラスを見て、静かに口を開いた
「少し、ペースが速くありませんか」
『え? そうかな?』
「そうですテ先ほどから、かなり飲んでいますよ」
『でも、美味しいんだもん』
「美味しいからと言って飲みすぎて良いとは限りません」
『はぁい』
返事だけは素直だった
七海は、そこで話を終わらせず、紅海の顔を見た
頬が赤い
目元も、いつもより少し緩んでいる
本人はまだ平気だと思っているようだが、普段より表情が柔らかくなっていた