第46章 秋の香りと想い
向かい側で七海がグラスを置く
「五条さん…遊佐君をからかうのは、そのくらいにしてください」
「えー、七海まで?七海は真面目すぎるんだよね」
「五条さんが不真面目すぎるんです」
紅海が、くすくすと笑った。
『ふふっ…七海は真面目なところが良いんだよ、私は好きだけどね?』
「ちょっ…流鏑馬さんまで、何ですか…」
七海は慌てて目をそらす
『え!?私はからかってないよ?』
そう言いながら、紅海は笑顔でグラスを持ち上げた
「それでは、文化祭の無事終了を祝して……乾杯、ということでよろしいでしょうか」
伊地知が控えめに提案する
「いいね!じゃ、乾杯!」
五条がグラスを掲げる
「乾杯」
「乾杯です」
「乾杯!」
『ふふっ、かんぱーい!』
それぞれのグラスが、軽い音を立てて触れ合った
遊佐と伊地知て、互いの仕事の意見交換
高専時代の話や、なぜか筋トレの話まで飛んだり
わいわいと賑わう…
「そういえば、流鏑馬さん…
文化祭、カフェをされたとか?」
七海が箸を手にしたまま尋ねた
『あ、うん…生徒たちがね、やってみたいって言って』
「そうですか…流鏑馬さんは、接客を?」
紅海は一度考えて、言葉を選ぶ
『う、うん…ウェイトレス?かな?野薔薇ちゃんと一緒に』
紅海は隣で、ニヤニヤしている五条を振り返った
『悟、変なこと言わないでね?』
「えー?変なこと?紅海がメイド姿で可愛かったって話?」
『ちょ、ちょっと!変なこと言わないでって!』
「だって本当じゃん」
五条は悪びれずに言った
遊佐が、持ち上げかけたグラスを止める
七海は無言で五条を見た
「……五条さん」
「ん?」
「嫌がってるでしょう?もうやめましょう」
「え、なんで? 事実なのに」
『悟!』
紅海の抗議に、五条は楽しそうに笑った