第46章 秋の香りと想い
伊地知が案内したのは、気取らない雰囲気のお好み焼き屋だ
鉄板の熱気と、ソースの香ばしい匂い
店内には仕事帰りらしい客の声が飛び交い、鉄板の上では、あちこちでお好み焼きが焼かれている
席に着くなり、紅海はメニューを覗き込んだ
『わぁ、いっぱいある!ねえ、悟、どれにする?』
「んー、紅海が食べたいのにしな?」
『えー、悟も選んでよ』
「じゃあ、適当に何個か頼んで、みんなで食べるか」
『それがいい!皆はそれでも大丈夫?』
それぞれが頷く
他の人間を気遣う紅海を見て、五条は小さく笑った
こういうところは、昔から変わらない
「それでは、まずは飲み物を頼みましょうか」
伊地知が店員を呼び、注文を取りまとめる
ビールを頼む七海と遊佐
紅海は最初の一杯をビールにして、五条は烏龍茶を注文した
「五条さんは飲まへんのですか?」
遊佐が尋ねる
「僕はアルコールはパス」
『悟、昔から飲めないんだよ』
「意外やな…普通に風呂上がりにワインとか飲んではるんかと思てました」
「何、そのバスローブに会いそうな設定…そして、その残念そうな顔!飲めない男は駄目?」
「いえ、五条さんの場合、飲めても飲めなくても、あまり変わらない気がします」
「由布湯、僕のこと褒めすぎ~」
「今のは褒めてませんよ」
「えー?そーなの?」
五条はけろりと答える
数か月前まで、遊佐にとって五条悟は、文字どおり雲の上の存在だった
今だって、その実力や立場が変わったわけではない
ただ、紅海を巡って互いの気持ちを知り
何度も言葉を交わすうちに、以前よりはずっと近い場所から話せるようになった
もちろん、だからといって遠慮がなくなったわけではない
――この人、ほんまにどこまで本気なんか分からへんな
まぁ、紅海ちゃんに関しては、信頼はしてるんやけども…
遊佐は、そんなことを考える