第46章 秋の香りと想い
高専の門を潜り、三人は並んで坂道を下っていた
文化祭の賑わいは、もう無い
生徒たちの前では、いつも以上に調子よく振る舞っていた五条も、今は少し落ち着いて……いるのかどうか
時折、遊佐の話に横から口を挟んだり、紅海が思い出したように話す文化祭の出来事に笑ったり
肩の力が抜けている様にも見えた
こうして気心の知れた相手と歩いていると、ふと昔の空気が顔を出すことがある
そのときだった…
少し先で、一台の車が速度を落とした
窓が下がり、運転席から伊地知が顔を覗かせる
「あ、皆さん! 文化祭、滞りなく終わったんですか?」
『あ、イッチー』
紅海と五条の声が、ほとんど同時に重なった
伊地知は教師二人の顔を見比べ、ほっとしたように笑った
「丁度、無事に終わったのかなぁって、話をしてたんですよ」
「なに?心配してくれてたんだ?この僕を?」
ビクッと肩を震わせる伊地知
「いえ!そう言うわけでは!
結界や立入禁止区域については、五条さんを信頼しているんですよ
それでも非術師も入場するわけですし…文化祭と言えば他校の不良がやってきて…と、言う印象が…」
「ふーん?」
五条は、わざとらしく感心したような声を出した
伊地知が困った顔をする
そんな伊地知を庇ったのか、そんなつもり無かったのか…
紅海がふと思い出した
『そう言えば、私達が一年の時の文化祭……他校の不良来たよね?
わざわざこんな遠い学校に足延ばしてきたなぁって…印象に残ってる』
「あぁ…そう言えば有ったな…傑と紅海が大暴れしたやつね?」
『いや、悟も大暴れしてたよ?あ、違う…本気出せなくて小暴れ?かの?』
五条は、意地悪な笑顔で肩をすくめる
「ま、ちょうど良かった、乗せてってよ?今から皆で飲みに行くんだよね」
「えっ、でも……」
伊地知の視線が、車内へ逃げた
後部座席には、任務帰りらしい七海が座っている
スーツ姿のまま、疲れた顔で窓の外を眺めていた七海は、話題に上がった瞬間、嫌な予感がしたように目を閉じた
「……五条さん」
「ん?」
「私は、任務帰りです」
「知ってるよ?お疲れ~」
「そういうことを言っているのではありません」
「えー、じゃあ何?」
五条は本気で分からないという顔を、わざとしてみせた