第45章 文化祭とオムライス
でも、悟は誰にでも優しい
自分だけが特別だと思うのは、きっと思い上がりなのかもしれない
『……大事な人…かな』
ぽつりと、紅海は答えた
言ってから、はっとする
『あ、いや! もちろん、同期として! 仲間として、っていう意味で……!』
太田は思わず笑いそうになったが、どうにかこらえた
「うん…大事な人なんだね」
『……はい』
「そっか」
それ以上、からかうことはしなかった
紅海は少しうつむいて、指先をもじもじと動かしている
太田は、その様子を見ながら尋ねた
「ねえ…紅海ちゃんは、五条さんが誰にでも優しいから
自分も特別じゃないって思ってるの?」
『……うん』
「じゃあ、もし五条さんが、紅海ちゃんにだけ優しかったら?」
『えっ』
紅海が顔を上げた
「そのときは、素直に嬉しい?」
『……それは』
嬉しいに決まっている
自分にだけ向けられる優しさがあったなら
自分だから隣にいてくれるのだと分かったなら
きっと、今よりずっと嬉しい
けれど、それを口にするのは、何だかひどくワガママに思えた
『……嬉しい、と思います』
「うん」
太田は穏やかに頷いた
「じゃあ、紅海ちゃんは、五条さんにどう思われたいの?」
『……え?』
「仲のいい同期として? それとも……」
そこで、太田は言葉を切った
決めつける必要はない
紅海が自分で考えなければ、意味がないのだから
「ごめんね…ちょっと、意地悪な質問だったかも」
『い、いえ……』
「ただね」
太田は、紅海の肩にそっと手を置いた
「相手がどう思っているかは、紅海ちゃんが考えてるだけじゃ分からないでしょう?」
『……』
紅海は、じっと太田を見つめた
「五条さんが誰にでも優しい人だとしても、紅海ちゃんが、その人と一緒にいると楽しいなら
それは、紅海ちゃん自身の気持ちでしょう?」
『……うん』
「勘違いだったら恥ずかしい、とか。迷惑だったらどうしよう、とか
そういうことを考えるのも解るんだけど」
太田は少しだけ笑った
「そればかり考えて、自分がどうしたいのか、分からなくなっちゃうのはもったいないよ」
紅海は何も言わなかった
ただ、胸の奥に、何かが小さく引っ掛かったような気がした