第45章 文化祭とオムライス
オムライスを食べ終えた太田夫妻は、教室を出る前に紅海へ声を掛けた
「紅海ちゃん、ちょっといい?」
『あ、はい!』
紅海は近くにいた伏黒に一言断り、太田のところへ向かった
教室から少し離れた廊下
太田は、ほかの人に聞こえないように声を落とした
「……もしかして」
『?』
「前に話してた、勘違いしそうになっちゃう友達って……彼、五条さんのこと?」
『……!』
紅海は息を大きく吸い込んだ
『う、うん……』
一瞬、目を泳がせる
『あ!でも、その、私、恋愛経験とか全然無いから……
だから……あの……悟って誰にでも優しいし、距離感近いし……』
「うん」
『それに、私たち同期だし…昔から一緒にいるから、たぶん、そういうのもあるんだと思うし……』
「うん、うん」
『だから、私が勝手に勘違いしてるだけ………!
ん?勘違いって何だろ?……』
そこまで言って、紅海は口を閉じた
自分でも、何をそんなに慌てているのか分からない
勘違い…要するに、距離の近い五条が、もしかして、私を特別に思ってるかもしれない…
と、勘違いしてしまう……と言うこと…だよね
それって、じゃあ私は、仮に悟に特別に思われてたらどうなの?
太田は急かさずに、紅海の顔を見ていた
――なるほどなぁ
まず、彼は顔がいい
背も高いし…仕事もできるらしい
彼女の話を聞く限り、実力も相当なものなのだろう
そのうえ、あの余裕
人当たりもいいし、初対面の相手にも臆さない
……ちょっと軽そうだけど
いや、かなり軽そうに見えるけれど…
正直、スペックだけなら申し分ない
ただ、太田が知りたいのは、そんなことではなかった
「紅海ちゃん」
『……はい』
「五条さんって、紅海ちゃんにとって、どういう人なの?」
『え……?』
紅海は困ったように眉を下げた
『どういう人……』
すぐには答えられなかった
同期?友達?
一緒にいるのが当たり前の人…
困ったときには頼りになるし、くだらない話で笑わせてくれる
自分が落ち込んでいると、ポジティブな返しで忘れさせてくれる