第45章 文化祭とオムライス
その隣で、紅海はまだ納得できていない様子だった
『……でも、悟だって、女の人に触られたりすることあるでしょ?』
「あるねぇ」
『じゃあ、同じじゃない?』
「僕はいいの」
『なんで!?』
「僕だから」
『答えになってないよ!』
紅海が頬を膨らませる
五条はようやく卵を溶き終え、フライパンに流し入れた
じゅう、と小気味よい音が厨房に響く
「まぁ、いいや、紅海はそのままで」
『……?』
「ただ、嫌なことされたら、ちゃんと嫌って言うこと
困ったら誰か呼ぶこと…いい?」
紅海はその声に気づいたのか、ぱちぱちと瞬きをする
『うん、分かった』
「よし」
五条は満足そうに頷き、オムライスを仕上げていく
そして、最後にちらりと紅海を見た
「…あと、あんまり簡単に男の人に腕とか掴ませないことね」
『えっ、でも、さっきは……いいやって』
「さっきの話はもう終わったから良いの」
『悟が言い出したんでしょ!』
「はいはい、ごめんねー」
まるで反省していない声
紅海はむっとしたまま、五条の横顔を見つめる
『…悟って、たまにお父さんみたいなこと言うよね』
ぴたり、と五条の手が止まった
「…は?」
『え?』
「いやいや、待って、誰がお父さん?」
『悟』
「僕、同い年なんだけど?」
『知ってるよ?』
「じゃあ、なんでお父さんなの!?」
『私の事、いつも心配してくれるからかな?』
「うーん」
『でも、気にしてくれてるのは嬉しいんだよ、ありがと』
へにゃっと笑う
あまりにも素直な返答に、五条の耳が、ほんのわずかに赤くなる
「はぁ…ほんっと、君ってさぁ」
『なに?』
「なんでもない」
五条は、くるりとフライパンを振った
卵が皿の上に滑り落ちる
「はい、次、紅海、これ運んで」
『はーい!』
先ほどまでの話などすっかり忘れたように、嬉しそうに皿を受け取った
その後ろ姿を見送りながら、五条は小さく呟く
「ほんと、目が離せないよねぇ」