第44章 おいでとさぼり
「ここなら、あいつらもすぐには見つけられねーだろ」
少は入口から外を覗く
追ってきた大人たちが、通りの向こうを探している
「よし、撒いた」
少年は満足そうに笑った
紅海は隣に立ったまま、ゲームセンターの中を見回した
見たことのない機械
光る画面大きな音
そして、少年は一台のゲーム機の前で立ち止まった
「……これやろ」
『これ?』
「ゲーム」
紅海は画面を覗き込む…そこには、二人の格闘家が映っていた
『これ、どうするの?』
「殴る、そして蹴る」
『…この機械を?』
「違うって!」
少年は椅子に座った
「こういうの、俺、得意」
紅海も隣に座る…そして、画面に向かう少年の顔を見る
どこの誰かも知らない、ただ、少し変な男の子
自分の知らない事を教えてくれる
「ほら、こっからお金入れて……」
少年が、ゲーム機を指差した
紅海は画面を覗き込む
『お金……』
そう言われて、ポケットに手を入れる
浅葱から預かった小さな財布
中には、何枚か硬貨が入っている
でも
『これ、おばあちゃんが使っていいって……』
キッチンカーで何か食べるために渡されたお金だ
それ以外に勝手に使ってはいけない気がした
紅海が財布を見つめたまま悩んでいると
「ほら」
少年が自分のポケットから硬貨を取り出した
「入れてやるよ、ほら」
チャリン
百円玉が、ゲーム機の中へ落ちる
「はい、これでできる」
『いいの?』
「別に」
椅子に座り直す少年
「ほら、ここ押して」
『こう?』
「そう」
画面が切り替わる
大きな音とともに、キャラクターが現れた
紅海の目が丸くなる
『わあ……!』
“STREET FIGHTER”
『外国のゲーム……?』
「ストリートファイターって書いてんだよ
まぁ、みてな?」
少年は、紅海の前でプレイしてみせる
『すごい!』
画面の中で、自分の選んだキャラクターが軽やかに動く
走って、跳んで、蹴って、殴る
そして、技を繰り出す
紅海はすぐに夢中になった