第43章 付添いと弁当
昼ご飯の時間は短い
けれど、午前中よりも少しだけ空気が柔らかく感じる
灰原は食べながら午前中の戦闘について話し始める
「さっきの二体目、僕もっと早く気づけたと思うんですよ」
『うん』
「でも、最初のやつ倒さなきゃって思って」
『そういうのも経験だね…焦った時に、自分が何を見落とすのか…そこが分かるだけでも大きいよ』
紅海は2人にアドバイスをする
紅海は静かに聞いていた七海にも目を向ける
『七海はどうだった?』
「……自分の間合いが、思ったより狭いと感じました」
『よし、じゃあ午後は、それを意識してみようか』
「はい」
午後になり呪霊の数が増える
一体を祓ったと思った場所から、さらに別の呪霊が現れる
灰原が動き、七海が援護する
午前よりも二人の連携が良くなっている
紅海は少し離れたところから見ていた
必要な時だけ声を飛ばす
『七海、左!』
「はい!」
『灰原、追いすぎない!』
「了解!」
今度は二人とも反応が早い
紅海はそれを見て、少しだけ笑った
――ちゃんと私の言ったこと覚えてる…
それに、自分で考えて動いてるし
それなら、今は手を出さなくていい
そう判断して、紅海はその場に立ったまま周囲を警戒する
その時だった木々の奥
別の呪力を感じる
紅海の表情が変わる
『……二人とも…一旦、止まって』
灰原と七海が振り返る
紅海は二人の前に出た
『今までのとは違う…』
二人も気づく…空気が重い
紅海はすぐに携帯を取り出した
『夜蛾先生に連絡するね』
「祓いますか?」
七海が問う
『状況を見てからね?実技訓練だからって、無理に倒す必要はないよ」
紅海は二人を見る
「実際の任務も同じ…『祓えるか』だけじゃなくて、『祓っていい状況か』も考えてね」
それは、朝より少し踏み込んだ言葉だった
自分の力量、敵の力量
周囲の状況、撤退の判断…
それら全部を含めて、術師の仕事なのだ
先程の呪霊の気配からは離れて、自分達が祓える呪霊を祓っていく
段階を経て、自分の術式、相性…呪力の感覚を掴んでいく