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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第43章 付添いと弁当



午後の授業が終わった頃だった

廊下を歩いていた紅海は、後ろから呼び止められた
「流鏑馬」
低い声に振り返る
夜蛾が、少し離れたところに立っている

『はい?』
「ちょっと来い」
『……?』
何かあったのだろうか

紅海は首を傾げながら、その後をついていった
夜蛾に連れられたのは、校舎の小さな部屋だった
扉が閉まる

夜蛾は腕を組み、紅海を見る
「奥の例の演習場のことは知っているな?」
「あ……はい」
紅海は頷いた

高専の敷地には、いくつかの演習場がある
その中でも山側の奥にある場所
正式な名称は別にあるのだが、いつの頃からか生徒たちはそこを、
――呪いの演習場
そう呼ぶようになっていた

結界で区切られているにもかかわらず、なぜか呪霊が発生する
一度祓っても、しばらくすればまた湧く
理由は詳しく分かっていない

だからこそ、術師としての力量を試すには都合がいい
『去年、何度か入ったことがあります』
「ああ、記録を見た」
夜蛾は短く返した

そして、少し間を置く
「一年を連れていって面倒を見ろ」
『……え?』
紅海の目が丸くなる

『私が?一年生を……あの演習場に?』
「そうだ」
紅海の頭の中に、二人の顔が浮かんだ
灰原と七海
まだ入学したばかりの一年生
「……」
紅海は少し黙った
奥の演習場
去年、自分が初めて入った時のことを思い出す
山の中…

湿った土の匂い
木々の向こうから突然現れる呪霊

結界が張られているから安全――という場所ではない
むしろ、結界があるからこそ外へ被害を出さずに済んでいる

『……私で、大丈夫でしょうか』
思わず口に出た
夜蛾は即答した
「おまえが適任だと思った」
『……適任』
紅海は、その言葉を小さく繰り返した

けれど、自分の中ではどうにも腑に落ちない
もっと強い人間ならいる
五条、夏油
硝子だって、反転術式を扱える

自分より向いている人間はいくらでもいる気がした
『分かりました』

それでも紅海は頷いた

『……やってみます』
夜蛾はそれ以上何も言わなかった

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