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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第37章 都と帳


仲間たちの顔を思い出す

そして今、目の前で
裏切った術師へ手を伸ばそうとしている紅海の姿

その姿を見てメカ丸は何も言わず拳を握る

獣のような腕が唸りを上げる
石畳を砕きながら振るわれた一撃を、紅海は紙一重でかわした

距離を取り互いに睨み合う
その張り詰めた空気を裂くように、メカ丸が腕を構えた
機械の腕部が展開され、砲口が呪詛師へ向く

紅海は一瞬だけ視線を向ける
「撃ちます」

短く告げると同時に、呪力が収束する
轟音

砲撃は一直線に呪詛師へ―

が、届かない
大きく逸れ、石段の脇を抉っただけだった

砂煙が舞い上がる
呪詛師は鼻で笑う
「何だ?外したのか?」

メカ丸は銃口を下ろした
「…駆動系統に異常」

淡々とした声
「次弾装填までしばらく時間が掛かる…」
いかにも取って付けたような説明だった

紅海は疑わない
『分かった』

すぐに判断を切り替えて告げる
『メカ丸くん、ここは私が引き受ける…あなたは一度、指揮所へ戻って』

周囲を素早く見回す
『退避所経由なら安全…
この先を左…そのまま坂を下ったら指揮所に近道だから』

「……」
メカ丸は返事ができなかった

動けない
紅海を助ければ、真人たちとの約束を裏切る
呪詛師へ加勢すれば、京都校を裏切る

拳だけが静かに軋む


その間にも、紅海は呪詛師から目を離さない
ふと、思い出す…呼んでいた名前を…
何度か顔を合わせた術師

『…保田さん』

その名を呼ぶと呪詛師の眉がわずかに動いた

『保田さん…まだ、間に合います
『私に何かできることがあるなら、一緒に考えませんか…今なら、まだ――』

言葉は最後まで続かなかった
保田は自嘲するように笑う

「流鏑馬さん、相変わらず、お人好しですね」

変異した腕が軋む
「だから嫌いになれなかった…」
その言葉と同時に、地を蹴る

獣の腕が一直線に紅海へ迫る
『っ…!』

紅海は横へ流れるように身をかわし、呪具で受け流す
火花が散り金属音が境内へ響いた

少し離れた場所で、その光景を見つめるメカ丸は、なおも動けずにいた

紅海は、敵になった術師へ、最後まで手を伸ばそうとしている

その姿が
胸の奥へ静かに突き刺さる

……先生
その呼びかけは、言葉にはならなかった
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