第37章 都と帳
紅海は安堵したように息を吐き、呪具を収めた
『びっくりしたぁ……』
「先生も中心部を?」
『うん』
紅海は周囲を見回した…静かな境内
『普通なら、帳は術者が外から維持した方が強固になるし効率がいい』
一拍置いて続ける
『でも、この帳は条件付き…一般の人がいるのは外側だけで、中心には入れない』
メカ丸は黙って聞いていた
『呪霊も、ほとんどいない…つまり、術師も滅多に入って来ない
だったら――内側の方が安全…」
メカ丸が静かに言葉を継ぐ
「術者が身を隠すには都合がいい」
『そう』
紅海は笑った
『交流会の時も、釘のような呪具を使って帳を降ろしたって聞いたから…だから今回も、似たような仕組みかなって』
メカ丸は数秒だけ沈黙した
「……そこまで読んだとは」
その声は小さく
紅海は照れたように頭を掻く
『勘だよ…それに、今はみんな呪霊の対応、一般の人を守る方が優先で…
だから、中心まで来られる術師は多くないと思って』
メカ丸は静かに頷いた
「合理的だ」
『だから…内側はわたし…で…外側は…』
………遠く、高い建物の屋根の上
五条は腕を組み、広大な帳を見下ろしていた
六眼が捉えるのは、呪力の流れ
逃げ惑う一般人やそれを追う呪霊と、それを祓う術師たち
そして、二重帳を維持する膨大な呪力
「……」
小さく息を吐く
「外は僕…」
誰へ言うでもない独り言だった
「内側は紅海…」
その方が早い
互いに役割は分かっている…言葉にしなくても自然とそう動く
一方、境内では紅海がメカ丸へ向き直った
『行こうか』
メカ丸は頷く
「ああ」
『外は悟が見てくれるから、早いと思う…だったら私たちは――』
紅海は静かに前を見据えた
『この中にいる術者を見つけよう』
二人は並んで石段を上がっていく
静まり返った清水寺には、風の音だけが流れていた
清水寺の境内は、不気味なほど静かだった
石畳の上を、紅海とメカ丸が慎重に歩く
風が木々を揺らし、乾いた葉が足元を転がる
呪霊の気配はない
あるのは、帳を流れる呪力だけ