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淫夢売ります

第44章   オートマータ


思わず高澤里宇という本名を言いそうになるが、寸でのところで女から言われたことを思い出した。『店内では、必ずプスドニムをお使いください』と言われていた。

言いかけてやめたので、マスクから覗く男性が目が怪訝そうな色合いを帯びる。
「あ・・・っと、トワノン・・・です」
「これは、トワノンさん、はじめまして、私のことはファイとお呼びください」
ファイと名乗った男が差し出したカクテルを手に取る。どうやらマティーニのようだ。別に飲めないわけではないし、こんな異常な空間にいるのに、シラフではやってられない、という気持ちもあり、口をつけた。

爽やかな苦みが唇を濡らし、舌が濃いアルコールで痺れる。喉に落ちていく熱が心地よい。アルコールが少し回って、やっと落ち着いてきた。

「トワノンさんは、今日が初めてですか?」
「えっと・・・そ、そうです」
実際、自分がどうやってここに来たのか覚えていない。
「差し支えなければ、私がここをご案内いたしましょうか?」
ファイがそっと手を出してくる。なんとなく、それがお姫様を舞踏会にエスコートする紳士のような感じがしたので、思わず手を取ってしまった。

「初めてだとびっくりするでしょう?」
「は・・はい・・・」
確かにびっくりする。普段は秘められているはずの性の営みが、これほど堂々と繰り広げられているのだ。自分の顔が仮面で隠されていて、素顔も表情も周囲にバレていない、というのが、唯一安心できるところだった。
「大丈夫です。すぐに慣れます。それに、ここは会員制ですし、みな身分も明らかです。同意なくセックスに及ぶような人はひとりもいないです。トワノンさんが嫌なら誰からも何もされることはないですし、トワノンさんも何もしなくて良いんですよ」

それを聞いて少し安心した。相変わらず周囲には淫靡な気配が満ちている。ちらっと右手を見ると、男性に後ろから抱え込まれるようにして全裸の女性が喘ぎ声を上げていた。その陰部のあたりに目が行ってしまう。そこには男性の猛った怒張が深々と突き刺さっていた。照明は薄暗いが、まったくないわけではない。下から打ち上げられるようにして、小さく跳ねる女の姿勢によっては、その部分にキラキラと淫らな体液がきらめているのが見えた。

ゴクリ、と喉を鳴らす。
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