第44章 オートマータ
「あそこがジュエの貸出カウンターです」
そこには白を基調として、顔の横に翼が広がっているような形のマスクをしたフォーマルなベストに身を包んだ女性が立っていた。あのマスクがおそらく『天使』のそれ、なのだろう。つまり、あの女性はこの店のスタッフということだ。
女性が立っている奥には3段くらいの棚があり、立派な男性の性器を模したような張り型や、女性が使うであろう、いわゆるピンクローターのようなもの、少し長めのポコポコと丸い数珠のようなものが連なった私には何に使うのかよくわからないものなどが置いてあった。右側に目を移すと、革製の手枷や先が幾重にも分かれたムチのようなもの、これもまた用途がよくわからない紐状のものなどが展示されていた。
「好きなおもちゃの貸出ができるというわけです」
用途がわからないものも多数あるが、あれらが性的な行為に用いられるものであるということはわかる。なるほど、セックス・トイ・・・で、ジュエ(おもちゃ)というわけか。
「こちらはバーカウンター。スナック程度の食べ物もありますが、メインはアルコールですね。珍しいものでは『媚薬入り』なんてのもあります。お酒が苦手ならノンアルコールもありますよ」
さあこちらに、といって、広場を横切ってカウンターなどが立ち並ぶスペースと反対側に手を引かれる。
「ここはピエスと言われるところです。ソファやマットなどがあります。ご覧の通り、低い仕切りもありますので、プレイをするのにうってつけです。他の人の気配を感じながら交わるのにはよいところです・・・ほら、あちらをご覧なさい。」
ファイが示した方を見ると、ホールの真ん中よりも暗くなっているところで、ひとりの女性が二人の男性を『相手』にしているのがわかる。
「彼女とは私もプレイしたことがあります。ラビという名前です。ラビットのラビ、だそうです。」
ラビは、うさぎをモチーフにしたマスクをつけており、小柄で肉感的な身体は、そのプスドニム(仮名)によくあっているように思えた。胸を開け、その色白の裸体を惜しげもなくさらしている。ぷりんとした張りのある胸を見て、私は場違いなことに羨ましいと思ってしまった。下半身はかろうじてミニのスカートを履いているが、下着はつけていないように見えた。